会社概要

Alphabet Inc.は、Googleを中核事業とする持株会社であり、世界最大級のデジタル広告プラットフォームを運営している。主要プロダクトはGoogle検索、YouTube、Android、Google Cloud Platform(GCP)、Google Workspace、Chromeブラウザ、Pixelデバイスなど多岐にわたる。

直近では、自社開発の大規模言語モデル「Gemini」シリーズを検索・YouTube・Cloud・広告最適化といったあらゆる領域に組み込んでおり、独自設計のTPUチップとNVIDIA GPUを組み合わせたフルスタックのAIインフラを自前で保有している。広告事業の安定した収益基盤に加え、AI時代における成長ポテンシャルの高さから、多くの投資家の注目を集めている。

セグメント情報

Alphabetの報告セグメントは3つに分かれる。
※売上高比率はFY2025

① Google Services(売上高の約87%)
広告事業(Google検索、YouTube広告、Google Network)とサブスクリプション・プラットフォーム・デバイス(YouTube Premium/TV、Google One、Play Store、Pixelなど)で構成される。
広告が売上全体の約7割を占め、依然として収益の中核だ。Google Oneの契約者増やYouTube Premiumの伸びにより、サブスクリプション収入も着実に拡大している。
YouTube単体の年間売上は広告+サブスクリプション合算で、2025年に初めて600億ドルを突破した。
景気感応度は比較的高く、広告市場全体の動向に左右されやすい。

② Google Cloud(売上高の約15%)
GCP(コンピュート、ストレージ、AI Infrastructure、Vertex AIなど)とGoogle Workspace(Gmail、Docs、Meet等)で構成。
エンタープライズAI需要を背景に急成長しており、2025年通期の売上成長率は前年比+約38%、Q4単体では+48%と加速している。
2025年末時点の年間ランレートは700億ドル超、バックログは2,400億ドルに達した。
営業利益率もQ4 2025で30.1%と大幅に改善しており、利益貢献の柱に育ちつつある。

③ Other Bets(売上高の1%未満)
自動運転のWaymo、ヘルスケアのVerily、インターネットサービスのGoogle Fiberなど。売上規模は小さく赤字が続くが、Waymoは2025年に米国5都市で1,500万回以上のトリップを達成し、2026年にはマイアミでもサービスを開始。
2026年2月にはAlphabet主導で160億ドルの投資ラウンドを実施しており、中長期の成長オプションとして注目される。

業績推移

(単位:百万ドル、EPS・配当は1株あたりドル。Alphabetの会計年度は12月期)

引用:Alphabet FY2025(2025年通期)+Q4 の決算発表ページ

年度

売上高

営業利益

純利益

希薄化EPS

配当(宣言ベース)

FY2023

307,394

84,293

73,795

$5.80

FY2024

350,018

112,390

100,118

$8.04

$0.60

FY2025

402,836

129,039

132,170

$10.81

$0.84

売上高は3,074億→4,028億ドル(+31%)、純利益は738億→1,322億ドル(+79%)、EPSは$5.80→$10.81(+86%)と、3年を通じて明確な増収増益基調にある。営業利益率も27%から32%水準へ改善した。

成長の柱は3つある。
AI Overviews導入後も堅調に推移する検索広告、急拡大するGoogle Cloud、そして約1.2万人の人員削減を含むコスト構造改革だ。

一方で、AI基盤へのCAPEX急増が最大の懸念材料となっている。
2025年の約750億ドルから、2026年には1,750〜1,850億ドルへほぼ倍増する計画で、FCFへの圧迫リスクが今後の重要論点だ。

株主還元面では、2024年に上場以来初の配当を開始し、翌年には増配も実施している。
自社株買いも年600億ドル超の規模で継続しており、成熟企業としての還元姿勢が本格化した。

株価と指標

指標

数値

株価(終値)

$311.33(2026年2月11日)

予想PER(Forward P/E)

27.47倍

実績PER(Trailing P/E / TTM)

28.80倍

PBR(Price/Book, mrq)

9.07倍

予想配当利回り(Forward Dividend & Yield)

$0.84(0.27%)

引用:Yahoo Finance「Alphabet Inc. (GOOG)」

今後の注目点とリスク

Alphabetの成長余地を支えるのは、AI統合による検索広告の再加速だ。
AI Overviewsの導入後、検索クエリ数は商業クエリを含めて増加傾向にあり、「AIが検索を奪う」という懸念とは逆の動きが出ている。
数十万の広告主が利用するAI Maxの急成長も、広告事業の構造的な伸びしろを示している。

Google Cloudも強力なカタリストだ。
バックログは2,400億ドル、営業利益率は30%を超え、質・量ともに急改善している。
Apple社がGeminiベースの次世代AIモデル開発パートナーとしてAlphabetを選んだことは、技術力への高い評価の表れといえる。
Geminiエコシステム自体も月間7.5億ユーザー、毎分100億トークン処理という規模に到達しており、AIプラットフォームとしての存在感は着実に増している。

このほか、YouTube経済圏の成熟(年間売上600億ドル超、有料会員3.25億人突破)や、Waymoの商業化進展(米国6都市展開、160億ドルの追加投資)も中長期の成長ドライバーとなりうる。

見落としやすい前提条件

ただし、これらのシナリオにはいくつかの前提が潜む。
Google CloudのAI需要は「構築フェーズ」にあり、顧客側のAI投資が持続的なROIにつながるかはまだ見えていない。
バックログ2,400億ドルの収益化ペースにも不確実性がある。AI Overviewsの広告単価が従来の検索広告と同等の水準を維持できるかも、長期的には重要な検証ポイントだ。

主要リスク

最大の懸念は巨額のCAPEX負担だ。
2026年の設備投資は1,750〜1,850億ドルと前年比ほぼ倍増の計画で、FCFを大きく圧迫する可能性がある。
投資回収が想定より遅れれば、利益率の悪化に直結する。

規制面のリスクも根深い。
米司法省のGoogle検索独占訴訟、EUの競争法制裁(2025年Q3に35億ドル計上)、広告テック分野の独占訴訟と、複数の係争を同時に抱えており、事業分割や行動制限の可能性は排除できない。

このほか、OpenAI/Microsoft連合やMeta、Anthropicとの熾烈なAI競争、売上の約7割を広告に依存する景気感応度の高さ、Other Betsの損失拡大(Q4で36億ドル)、米中対立やEUデジタル規制といった地政学リスクにも目配りが必要だ。

まとめ

Alphabetは検索・広告の圧倒的な収益基盤と、Gemini・TPUを中心としたフルスタックAI基盤を併せ持ち、AI時代の恩恵を最も広範に受けうるテクノロジー企業の一つである。

一方で、2026年の設備投資が1,750〜1,850億ドルと前年比2倍超に膨張する計画であり、投資回収の時間軸とFCFへのインパクトが株価のボラティリティ要因になりうる。

今後とくに注視すべきは、Google Cloudの四半期売上成長率と営業利益率の推移、検索広告のCPCトレンドとクエリ数の変化、四半期CAPEXの実績値とFCFの推移、そしてWaymoの商業化進捗(トリップ数、展開都市数)である。