上場後初の四半期開示。売上高は前年同期比で約1.9倍となり、市場予想を上回った。牽引役はStarlink契約数の倍増と、AIクラウド契約の初期寄与。会社は次四半期・通期の数値ガイダンスを示さず、代わりに12月時点で年換算売上1,000億ドルという目標を提示した。設備投資は調整後EBITDAの5倍超に膨張し、翌営業日の株価は二桁下落。ただし週内に全戻しとなった。

※金額は米ドル建て、特記なき限り会社のUS GAAPベース。市場予想は報道ベースで、指標ごとに集計元が異なり、同じ指標でも集計元により差がある(各表の引用元を参照)。pt(ポイント)は率の変化幅を表す単位で、以下同様に用いる。本文では、会社IR・SEC提出資料の確定値、決算説明会での会社説明(会社説明)、報道ベースの数値(報道ベース)、筆者自身の計算・解釈(筆者計算・筆者分析・筆者の解釈)を区別して記載する。

1. 決算サマリー:売上は市場予想を13.2〜14.7%上回ったが、年換算した設備投資は年間コンセンサスを50.9%上回った

SpaceX(SPCX)が2026年8月4日の米国市場引け後に発表した2026年4-6月期決算は、売上高・調整後EBITDA・純損失のいずれもが改善する内容だった。同時に、四半期の設備投資が調整後EBITDAの5.2倍に達している。この2つが同じ四半期に共存していることが、今回の決算の全体像である(筆者分析)。

表1:2026年4-6月期 決算サマリー(単位:百万ドル、EPSはドル)

指標

実績

前年同期

前年比

市場予想

対市場予想

売上高

7,814

4,071

+91.9%

6,810〜6,900

+13.2〜+14.7%

営業損益

▲143

▲970

---

---

調整後EBITDA(非GAAP)

3,538

1,214

+191.4%

---

---

純損失

▲541

▲1,008

---

---

GAAP EPS(基本・希薄化後)

▲0.09

▲0.34

▲1.26〜+0.33

レンジ内

Starlink契約数(百万件、期末)

12.0

6.0

約+100%

---

---

設備投資

18,369

2,825

+550.2%

---

---

参考:設備投資(当四半期×4の年換算)

73,476

---

48,700

+50.9%

参考:調整後EBITDA-設備投資

▲14,831

▲1,611

---

---

引用:SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results(SEC EDGAR)FortuneInvesting.com(決算説明会トランスクリプト)
注1:売上高の市場予想は、
Investing.comが68億1,000万ドル、Fortuneが「約69億ドル」としており、集計元により差がある。対市場予想%はこの幅に対応する。
注2:EPSの市場予想は、Fortuneが報じたアナリスト予想のレンジ(1株当たり▲1.26ドル〜+0.33ドル)である。中心値は確認できなかったため、上振れ・下振れ幅は算出していない。会社は非GAAP EPSを開示していない。
注3:調整後EBITDAの市場予想は確認できなかったため「---」とした。「前年比191%増」は前年同期比であって、コンセンサス比ではない。
注4:設備投資の市場予想は、Fortuneが報じた年間ベースの487億ドル。四半期ベースの予想は確認できなかったため、当四半期実績を4倍した年換算値との比較のみを示している。
注5:前年比は百万ドル単位の確定値から筆者が計算した。会社は売上を「92%増」、調整後EBITDAを「191%増」と丸めて表記している。営業損益・純損益・EPSは赤字同士のため前年比%を表示していない。Starlink契約数は0.1百万件単位の開示値のため「約」を付した。
注6:設備投資はセグメント別開示のCapexで、キャッシュフロー計算書上の有形固定資産取得支出とは範囲が異なる(未払計上分・他の資金調達による取得分を含む)。

2. 増収額37億4,300万ドルのうち48.7%をAIセグメント単独が生み、Connectivityと合わせて94.2%を占めた

連結売上78億1,400万ドルは前四半期比でも66.5%増と、成長が四半期単位で加速している。増収額37億4,300万ドルの内訳は、AIが18億2,400万ドル、Connectivityが17億300万ドル、Spaceが2億1,600万ドルで、AI単独の寄与が全体の48.7%を占めた(筆者計算)。1年前に売上の18.1%だったAIが、この四半期には32.8%になった。

図1:SpaceX セグメント別売上高と構成比の変化(引用:会社決算発表)

表2:セグメント別売上と営業損益(単位:百万ドル)

セグメント

2026年4-6月期

2026年1-3月期

2025年4-6月期

前年比

前四半期比

構成比

Space(売上)

962

619

746

+29.0%

+55.4%

12.3%

Connectivity(売上)

4,291

3,257

2,588

+65.8%

+31.8%

54.9%

 うちConsumer

2,485

2,148

1,721

+44.4%

+15.7%

31.8%

 うちEnterprise & Government

1,806

1,109

867

+108.3%

+62.8%

23.1%

AI(売上)

2,561

818

737

+247.5%

+213.1%

32.8%

連結売上高

7,814

4,694

4,071

+91.9%

+66.5%

100.0%

Space(営業損益)

▲542

▲662

▲369

Connectivity(営業損益)

1,656

1,188

923

+79.4%

+39.4%

AI(営業損益)

▲1,257

▲2,469

▲1,524

連結営業損益

▲143

▲1,943

▲970

引用:SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results(SEC EDGAR)
注1:セグメント売上の単純合計(962+4,291+2,561)は連結売上7,814と一致し、消去項目はない。構成比の合計は四捨五入により100.0%となる。
注2:Consumer・Enterprise & Governmentの構成比は連結売上に対する比率。Enterprise & GovernmentにはStarlink Mobileの売上が含まれる。
注3:セグメント別のコンセンサスは確認できる集計値がなかったため列を設けていない。

Connectivityの中身では、Enterprise & Governmentが前年同期比2.08倍と伸び、同セグメント内の構成比を33.5%から42.1%へ引き上げた。この四半期にはStarshield(政府向けの安全保障用途に設計された衛星ネットワーク)で60億ドル超の複数年契約も獲得している。

一方、Starlink契約数は1,200万件と1年で倍増し、四半期の純増は170万件だったが、ARPU(1契約あたり月間平均収入)は66ドルで前年同期の85ドルから22.4%低下している。前四半期比では横ばいで、単価下落は一旦止まった格好だ。契約数の伸びを単価下落が部分的に打ち消す構図そのものは、上場前のS-1開示から変わっていない。

AIの急伸は新規のCloud Services Agreement(CSA、外部顧客に自社の計算資源を提供する契約)によるもので、当四半期に締結した分の契約総額は141億ドル、うち16億ドルが「増分の」AIインフラ売上として当四半期に計上された。AI売上の前四半期比増加額17億4,300万ドルに対して91.8%に相当し、伸びのほぼ全量がこの初期ランプで説明できる(筆者計算)。Spaceは打ち上げ回数が38回と前年同期の46回を下回りながら増収となった。会社は大型の顧客打ち上げが増えたことと顧客構成の変化を理由に挙げている。

先行指標としては、契約残高(backlog)が6月末で474億6,100万ドル、うち56%が1年以内、34%が1〜3年で売上計上される見込みと四半期報告書に記載がある。1年以内認識分は約265億ドルで、これは当四半期の売上を3.4倍した水準に相当する(筆者計算)。前払いに当たる契約負債(deferred revenue)は142億8,600万ドルで、2025年末の121億1,600万ドルから増加している。

3. 粗利率は55.3%へ11.3pt改善したが、AIセグメントの調整後EBITDA黒字化11億4,600万ドルは18億8,500万ドルの減価償却費加算に支えられている

売上原価を差し引いた粗利は43億1,900万ドル、粗利率は55.3%で前年同期から11.3pt、前四半期からも6.1pt改善した。営業損益は1億4,300万ドルの赤字にとどまり、営業損失率は前年同期の23.8%から1.8%へ22.0pt縮小している。総費用が57.9%しか増えないなかで売上が91.9%伸びたことが、この改善の中身である。

表3:利益率の推移(%、連結ベース)

指標

2026年4-6月期

2026年1-3月期

2025年4-6月期

前年同期比

前四半期比

粗利率

55.3

49.1

43.9

+11.3pt

+6.1pt

研究開発費比率

45.4

74.9

48.1

▲2.7pt

▲29.5pt

営業利益率

▲1.8

▲41.4

▲23.8

+22.0pt

+39.6pt

調整後EBITDAマージン(非GAAP)

45.3

24.0

29.8

+15.5pt

+21.3pt

純損失率

▲6.9

▲24.8

+17.8pt

Connectivity営業利益率

38.6

36.5

35.7

+2.9pt

+2.1pt

AI営業利益率

▲49.1

▲301.8

▲206.8

+157.7pt

+252.8pt

引用:SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results(SEC EDGAR)
注1:各比率は百万ドル単位の確定値から筆者が計算した。1-3月期の売上原価は上期累計5,883から4-6月期3,495を差し引いた2,388、同じく研究開発費は7,062から3,548を差し引いた3,514を用いている。
注2:1-3月期の純損益は四半期単独では開示されておらず、上期からの逆算値は用いていないため、純損失率を計算していない。上期の営業外損益には債務消滅損など四半期に偏在する項目も含まれる。
注3:調整後EBITDAは非GAAP指標で、会社の定義は決算発表のNote 1を参照。他社と定義が異なり得るため横比較には使えない。

ただし四半期単位の開示が始まったのは上場後で、比較できる過去は前四半期と前年同期しかない。上場前の2025年通期は売上約186億7,000万ドルに対し純損失約49億4,000万ドル(報道ベース)で、通年でみれば黒字化にはまだ距離がある。

図2:SpaceX AIセグメント 営業損益・減価償却費・調整後EBITDA(引用:会社決算発表)

AIセグメントの調整後EBITDAが11億4,600万ドルの黒字に転じたことは今回もっとも大きく報じられた変化だが、その中身は減価償却費の加算である。同セグメントの営業損益は12億5,700万ドルの赤字で、ここに減価償却費・のれん等償却18億8,500万ドル、株式報酬費用5億1,600万ドル、リストラ費用200万ドルを足し戻すと黒字額に一致する。連結の減価償却費28億4,800万ドルのうち66.2%をAIが占めるが、当四半期のAI設備投資158億2,800万ドルに対して償却はまだ8分の1程度にすぎない。稼働資産が増えれば償却も増えるため、この加算額は今後拡大する公算が大きい(筆者分析)。

EPS:純損失の縮小率46.3%に対し、1株損失の縮小率が73.2%になった理由

1株当たり損失は0.09ドルで、前年同期の0.34ドルから縮小した。ただしこの縮小幅は、純損失そのものの改善より大きい。純損失は10億800万ドルから5億4,100万ドルへ、すなわち0.537倍になった。一方で加重平均株式数は29億2,900万株から58億6,400万株へ2.002倍に増えている。0.537倍を2.002倍で割ると0.268倍、1株損失の縮小率にして73.2%となり、開示EPSの推移と整合する。株式数の倍増が、1株ベースの改善を実額ベースより大きく見せている(筆者計算)。

丸め値の0.09ドルと0.34ドルで割り算すると縮小率は73.5%となり、未丸め値ベースの73.2%と0.3pt食い違う。本文では未丸め値を採用している。なお会社は非GAAP EPSを開示していないため、GAAPと非GAAPの乖離分解は当四半期については論点として存在しない。上期累計では純損失と普通株主帰属損失に6億7,100万ドルの差があるが、四半期単独では両者が一致する。

キャッシュフローと資本配分:営業CFは上期34億6,600万ドル、設備投資は284億7,600万ドル

四半期単独のキャッシュフローは開示されず、記載があるのは上期累計のみである。上期の営業CFは34億6,600万ドルで前年同期の3億5,100万ドルから大幅に改善した一方、同じ上期のセグメント別設備投資は284億7,600万ドルで、差し引き250億1,000万ドルの資金流出になる。運転資本では売上債権が上期に20億300万ドル増加しており、大口契約の回収前残高が積み上がっている。売上の実在性を裏付けると同時に、回収遅延のリスクでもある。

手元資金は現金・現金同等物935億2,200万ドルと市場性有価証券64億8,700万ドルの計1,000億900万ドル。有利子負債とファイナンスリースは流動25億2,500万ドルと非流動368億3,900万ドルの計393億6,400万ドルで、差し引き606億4,500万ドルのネットキャッシュとなる。原資はIPOの手取り約857億ドルと、6月26日完了の250億ドルの社債発行(加重平均利率5.855%)。社債の一部は200億ドルのブリッジローン返済に充てられ、上期には債務消滅損15億4,500万ドルが計上された。配当と自社株買いはない。

4. 会社は数値ガイダンスを出さず、代わりに示した12月時点ARR1,000億ドルは、当四半期の月商平均を3.20倍にすることを意味する

当四半期の実績は、売上で市場予想を13.2〜14.7%上回った。対前回ガイダンスの評価は、上場が6月12日である以上そもそも論点として存在しない。そして会社は今回、次四半期・通期のいずれについても売上・利益の数値ガイダンスを提示していない。示されたのは、以下の定量目標と設備投資の方向感である。

表4:会社が示した定量目標と見通し

項目

会社の提示内容

時点・前提

比較対象(実績)

提示の場

年換算売上(ARR)

1,000億ドル以上

2026年12月の月次売上を年換算

4-6月期の月商平均26億500万ドル

決算説明会

設備投資

7-9月期・10-12月期とも4-6月期と「非常に近い」水準

四半期あたり約183億ドルを示唆

4-6月期 18,369百万ドル

決算説明会

計算資源(nameplate compute)

2026年末に2GW超

6月末 1.4GW(前年同期0.4GW)

決算発表・決算説明会

計算資源(同上)

2027年末に5GWより10GWに近い水準

電力・冷却設備は20GWを暫定目標とし、実現見込みは15GW程度と説明

決算説明会

Cloud Services Agreement

7月に67億ドルを追加受注、10月から寄与開始

6か月間で認識

4-6月期のCSA計上額 1,600百万ドル

決算説明会

売上1兆ドル到達

2030年(従来2031年)

ARRではなく年間売上。2029年の可能性も「ゼロではない」

2025年通期 約18,670百万ドル(報道ベース)

決算説明会

次四半期・通期の売上/利益ガイダンス

提示なし

引用:Investing.com(2026年8月4日 決算説明会トランスクリプト)SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results(SEC EDGAR)
注1:会社はEPSガイダンスも売上ガイダンスも提示していないため、レンジ中心値からEPSを試算する手順自体が適用できない。当四半期に当てはめた検証も行っていない。
注2:2025年通期の売上は会社の四半期開示に含まれないため報道ベースの丸め値を用いた。
注3:計算資源のGWは設備容量(nameplate)であり、稼働率や実効性能を示すものではない。
注4:長期目標は決算説明会での発言に基づくもので、Investor Day等のIRプレスリリースによる裏付けは確認できていない。
注5:決算説明会の発言は、
会社が公式トランスクリプトを掲載しているir.spacex.comではなく、Investing.comが公開した書き起こしで確認した。

この目標は、12月単月の売上を年換算した数字だと会社が定義している。これを12で割ると月商83億3,300万ドル。当四半期の月商平均26億500万ドルに対して3.20倍である(筆者計算)。10-12月期を通してこの水準が続くという意味ではなく、12月の1か月がこの走行速度に到達するという意味にとどまる。差を埋めるのは10月から寄与が始まるCSAとCursor買収の連結だと会社は説明しており、SpaceXの最高経営責任者、イーロン・マスク氏は「12月のARRが1,000億ドルになることは疑問符ではない」と述べている(会社説明)。

設備投資の見通しは、金額の絶対水準としては重い。SpaceXの最高財務責任者、ブレット・ジョンセン氏は「CapEx水準の観点では、次の2四半期は当四半期と非常に近いと考えていただいてよい」と説明した(会社説明)。この前提で上期実績に単純加算すると、2026年通期の設備投資は652億ドル規模になる(筆者計算)。売上1兆ドルの2030年到達は、2025年通期を起点にすれば5年で年率121.7%、2026年末のARR目標を起点にすれば4年で年率77.8%の成長が必要になる(筆者計算)。

5. 契約残高474億6,100万ドルが下支えとなる一方、上位2顧客で売上の37.8%を占める集中度が同時に生じている

以下は当四半期の開示から筆者が整理したポイントである。判断の材料を有利・不利に分けて並べたもので、優劣を採点したものではない。

ポジティブ要因

  • 営業レバレッジが数字として出た。売上が91.9%増える一方で総費用の増加は57.9%にとどまり、営業損失率は22.0pt縮小した。ジョンセン氏は「打ち上げにおける世界的な主導的地位、Starlinkの継続課金収入、AIインフラの急成長という組み合わせが、営業レバレッジの改善を引き続き牽引している」と述べている(会社説明)。
  • Connectivityが単体で黒字を積み上げている。営業利益16億5,600万ドル、営業利益率38.6%で、前年同期から2.9pt改善した。Fortuneによればアナリスト予想の35.9%も上回っている(報道ベース)。全社の赤字を吸収する原資になっている。
  • Enterprise & Governmentが消費者向けより速く伸びている。前年同期比2.08倍で、Connectivity内シェアは42.1%。単価下落の影響を受けにくい領域が拡大している。
  • 財務の余力が大きい。ネットキャッシュ606億4,500万ドル。当面の設備投資を追加の外部調達に頼らず実行できる水準にある。
  • 契約残高の可視性がある。1年以内に売上計上される見込みの分だけで約265億ドルあり、四半期報告書に認識時期の内訳まで記載されている。

リスク要因

以下は筆者整理のリスクシナリオであり、発生を予測するものではない。

  • 設備投資が調整後EBITDAを大きく上回る状態が続く。当四半期の差は148億3,100万ドル。会社は次の2四半期も同水準の投資を続けると説明しており、ネットキャッシュは減っていく方向にある。
  • 顧客集中度が高い。四半期報告書によれば、Customer Aが売上の18.3%、Customer Bが19.5%を占める。Customer Bは全額がAIセグメント向けである。合計37.8%を2社が握る構造で、AI売上の伸びは同時に集中度の上昇でもある。
  • AIセグメントは営業赤字が続いている。調整後EBITDAは黒字化したが、営業損益は12億5,700万ドルの赤字。償却が積み上がる局面でこの差がどう動くかは、まだ実績で確かめられていない。
  • ARPU低下が構造的に続く可能性。66ドルは前年同期比22.4%低い水準で、前四半期比では横ばい。国際展開と低価格プランが単価を押し下げる構図自体は解消していない。
  • Starshipへの投資回収時期が読めない。Spaceセグメントは5億4,200万ドルの営業赤字で、赤字幅は前年同期より拡大した。打ち上げ回数も前年同期を下回っている。
  • 長期目標が高い水準に置かれている。売上1兆ドルの到達年を1年前倒ししたことは、達成できなければ失望材料にもなり得る。この数値と時間軸は決算説明会での発言に基づくもので、プレスリリースには記載がない。

6. 決算はbeat-and-spend。発表翌営業日に株価が▲13.6%となったのは、年換算した設備投資が年間コンセンサスを50.9%上回ったためである

確定事実で総括すると、売上・調整後EBITDA・純損失はいずれも改善し、コンセンサスと比較できた売上は予想を上回った。同時に設備投資は想定より重かった。会社が通期ガイダンスを出さない以上、今回の決算に「raise」という語は当てはまらない。beat(実績が予想を上回った)とspend(投資が予想を上回った)が同居した、というのが最も短い要約である(筆者の解釈)。

株価は決算をまたいで大きく振れた。発表前日8月3日の終値は114.53ドル。発表当日8月4日は決算を控えて9.43%上昇し125.33ドルで引けた後、引け後の時間外で下落に転じた。時間外の下げ幅は報道により5〜9%程度と幅があり、Investing.comの集計では8.56%安の114.60ドル前後まで戻している。翌8月5日の終値は108.27ドルで、前日終値比13.61%の下落。その次の8月6日は6.14%上昇して114.92ドル、8月7日はさらに15.83%上昇して133.11ドルで週を終えた。8月7日終値は、決算発表当日の終値を6.21%、発表前日の終値を16.22%上回っている。

図3:SpaceX 調整後EBITDAと設備投資(引用:会社決算発表)

下げの理由として各社が挙げたのは、開示された数字の中では設備投資である。Fortuneによれば市場の設備投資コンセンサスは年間487億ドルで、当四半期の183億6,900万ドルを4倍した年換算734億7,600万ドルはこれを50.9%上回る。売上の上振れ幅より、投資の上振れ幅のほうが投資家にとって重かったということになる。加えて8月6日には9億1,150万株がロックアップ解除の対象となる予定で、需給への警戒が下落局面に重なっていた。初回に売却できるのは対象の20%までだが、これで浮動株比率は4.9%から11.8%へ拡大する。より大きな第2弾は7-9月期決算後とされる(報道ベース)。8月6日以降の反発は、その解除日に大きな売りが出なかったこと、テスラと共同で進めるテキサスの半導体施設Terafabの第1期計画の具体化、Cursor買収の早期完了観測が重なったものと報じられている。決算そのものの再評価だけで説明できる動きではない(筆者の解釈)。

なお「純損失が改善したのに株価が下がった」という整理を見かけるが、当四半期の非GAAP利益指標は調整後EBITDAのみで、非GAAP EPSは存在しない。両者は控除項目が大きく異なり、同じ「利益」として並べると改善幅の印象が変わる。

表5:株価と主要バリュエーション指標

項目

数値

算出根拠

株価(2026年8月7日終値)

133.11ドル

52週レンジ

104.83〜225.64ドル

2026年6月12日上場のため実質的に上場来。高値は6月16日

IPO価格/上場初日終値

135.00ドル/160.95ドル

2026年6月12日

発行済株式数(6月30日)

131億7,600万株

Class A 76億700万株+Class B 55億6,900万株

時価総額(筆者計算)

約1兆7,539億ドル

133.11ドル×131億7,600万株

ネットキャッシュ

606億4,500万ドル

現金等1,000億900万ドル-有利子負債等393億6,400万ドル

EV(筆者計算)

約1兆6,932億ドル

時価総額-ネットキャッシュ

PSR(当四半期年換算)

約56.1倍

売上7,814×4=312億5,600万ドル

PSR(直近12か月)

約76.1倍

直近12か月売上 約230億4,000万ドル

PSR(会社目標ARRベース)

約17.5倍

2026年12月のARR1,000億ドル

EV/調整後EBITDA(年換算)

約119.6倍

調整後EBITDA3,538×4=141億5,200万ドル

予想PER・PEG・配当利回り

記載しない

引用:The Motley Fool(2026年8月7日 終値・52週レンジ)SpaceX Form 10-Q(2026年6月30日終了四半期)CNBC(上場初日)
注1:時価総額は貸借対照表のClass A・Class B発行済株式数から筆者が計算した。報道されている時価総額は約1兆5,000億ドル(上場株式のみで算定)から約1兆6,200億ドルまで幅があり、どの株式クラスを含めるかで結果が変わる。
注2:直近12か月売上は、2025年通期約186億7,000万ドル(報道ベース)から2025年上期81億3,800万ドルを差し引き、2026年上期125億800万ドルを加えた概算値。2025年通期が丸め値であるため、この行の倍率も概算である。窓に含まれるのは2025年7-9月期・10-12月期と2026年1-3月期・4-6月期であり、前年同期は含まれない。
注3:予想PERは会社がEPSガイダンスを出しておらず、同一時点で信頼できる集計値が取得できなかったため記載していない。PEGは予想EPSに依存するため同様。配当は無配のため利回りは該当しない。
注4:52週レンジは場中値を含むため、終値とは基準が異なる。なお上場来高値については、225.64ドルとする集計と211ドルとする報道があり、基準が一致していない。
注5:当サイトは投資助言を行わないため、割安・割高の判断や目標株価は提示しない。アナリストの目標株価コンセンサスも掲載しない。

宇宙・通信は景気循環性の強いセクターではないが、この銘柄は上場から2か月弱で値動きが極めて荒い。6月16日に付けた高値225.64ドルに対し8月5日終値は52.0%低く、そこから2営業日で22.9%戻している(筆者計算)。業績のブレというより、需給と長期目標に対する織り込み度合いのブレである。

筆者の見方を書いておくと、今回の決算の情報価値は「AIセグメントが外販で売上を作れることが確定値で示された」点にある。上場前は、AIはStarlinkの利益を消費する部門というのが標準的な整理だった。ただし償却前の黒字は、稼働資産の償却が本格化する前の姿にすぎない。同じ設備投資水準を2四半期続けたあとの償却費と、そのときのセグメント損益こそが、この物語の実質的な検証になる(筆者の解釈)。

次回決算までの確認ポイント

  1. 7-9月期の設備投資が、会社の説明どおり4-6月期と同水準に収まるか。上振れすれば、通期652億ドルという筆者試算も上方に外れる。
  2. AIセグメントの減価償却費が18億8,500万ドルからどこまで増え、営業損益とセグメント調整後EBITDAの差がどう動くか。
  3. 10月から寄与が始まる67億ドルのCSAが、実際に売上として計上され始めるか。契約残高の1年以内認識比率が維持されるか。
  4. Customer A・Customer Bの売上構成比が、合計37.8%からさらに上昇するか低下するか。四半期報告書の集中度の注記で確認できる。
  5. Starlinkの契約純増170万件とARPU66ドルの組み合わせが続くか。単価が再び下がり始めれば、Connectivityの営業利益率38.6%にも影響が及ぶ。

出典

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。金額はすべて米ドル建てで、会社の会計基準はUS GAAP、会計年度は12月決算、対象四半期は2026年6月30日に終了した第2四半期です。会社は非GAAP指標として調整後EBITDAおよびセグメント調整後EBITDAを開示していますが、非GAAP EPSは開示していません。記載した数値・株価は執筆時点(2026年8月8日、日本時間)の公開情報に基づくもので、その後の開示や市場の動きにより変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。