過去最高の増収率と、四半期として初めて10億ドルの大台に乗った普通株主帰属のGAAP純利益。牽引役は米国事業で、増収額のほぼ全額がここから生まれた。第3四半期のガイダンスは二桁の前四半期比増収を見込む一方、そこから逆算される利益率はわずかに低下する。株価は翌営業日に3割近く上昇し、その後も高値圏で推移。非GAAP EPSがGAAP EPSを下回る状態は、2四半期連続となった。

※金額は米ドル建て、特記なき限り会社の米国会計基準(US GAAP)ベース。市場予想は報道ベースで、指標ごとに集計元が異なり、同じ指標でも集計元により差がある(各表の引用元を参照)。pt(ポイント)は率の変化幅を表す単位で、以下同様に用いる。本文では、会社IR・SEC提出資料の確定値、決算説明会での会社説明(会社説明)、報道ベースの数値(報道ベース)、筆者自身の計算・解釈(筆者計算・筆者分析・筆者の解釈)を区別して記載する。

1. 決算サマリー:売上高は会社ガイダンス中心値を7.6%上回り、通期見通しは過去最大幅の引き上げとなった

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は2026年8月3日の米国市場引け後、2026年6月30日を期末とする第2四半期(Q2 FY2026)の決算を発表した。売上高は前年同期比+92.8%となり、会社が過去最高と説明する増収率となった(会社説明)。会社が5月4日のQ1決算プレスリリースで示していた当四半期の売上ガイダンス中心値は17億9,900万ドルであり、実績はこれを7.6%上回った(筆者計算)。

三重の比較(対前年・対市場予想・対会社ガイダンス)のすべてで上振れし、同時に通期ガイダンスが引き上げられた点が、この決算の骨格である。上振れ幅は調整後営業利益でさらに大きく、5月時点の中心値10億6,500万ドルに対して+12.2%だった(筆者計算)。

表1:Q2 FY2026 決算サマリー

指標

実績

前年同期

前年比

市場予想

対市場予想

売上高

19億3,546万ドル

10億370万ドル

+92.8%

約18.0億ドル

+7.5%

GAAP EPS(希薄化後)

0.41ドル

0.13ドル

+224.3%

---

---

非GAAP EPS(希薄化後)

0.41ドル

0.16ドル

+158.2%

0.35ドル

+16.5%

GAAP営業利益

9億1,200万ドル

2億6,932万ドル

+238.6%

---

---

調整後営業利益

11億9,447万ドル

4億6,439万ドル

+157.2%

---

---

調整後フリーキャッシュフロー

12億2,036万ドル

5億6,877万ドル

+114.6%

約10.0億ドル

+22.0%

米国コマーシャル売上高

7億6,400万ドル

3億600万ドル

+149%

---

---

参考:未実現評価益控除後EPS(筆者試算・非GAAP)

約0.39ドル

---

---

---

---

引用:パランティア Q2 2026 決算プレスリリース(Form 8-K Exhibit 99.1)同 Q2 2025 決算プレスリリースYahoo Finance(2026年8月4日、市場予想)
注1:EPSの前年比は、開示された1セント丸め値ではなく、純利益(普通株主帰属)を希薄化後加重平均株式数で割った未丸め値どうしを比較して算出した(筆者計算)。丸め値ベースではGAAP EPSが+215.4%、非GAAP EPSが+156.3%となり、未丸め値ベースと最大8.9pt乖離する。
注2:市場予想は報道ベースで集計元・取得時点が指標ごとに異なる。売上高予想は報道により18.0〜18.1億ドル、非GAAP EPS予想は0.34〜0.35ドルの幅がある。ここでは同一記事内で揃う値としてYahoo Financeの18.0億ドル・0.35ドルを採用した。
注3:「参考」行は、SpaceX保有株を含む株式有価証券の未実現評価益6,600万ドル(四半期報告書の確定値)を税引前ベースで控除した筆者試算値であり、SEC開示上のGAAP EPSではない。GAAP EPSとして開示されている値は0.41ドルのみである。長期実効税率23%で概算した税引後ベースでも0.3936ドルで、1セント単位では同じく約0.39ドルとなる。非GAAP調整表の税効果は全項目合算の1行でしか開示されないため、この行は税引前ベースの参考値である。前年同期は同種の評価益の有無が確認できないため「---」とし、実力ベースの前年比較は非GAAP EPS行が担う。
注4:非GAAP EPSの対市場予想は、未丸め実績0.4076ドルと予想0.35ドルの比較。開示上の丸め値0.41ドルで比較すると+17.1%となる。

2. 増収額9億3,177万ドルの90%を米国が生み、米国の民間企業向けは前年比+149%へ加速した

パランティアは売上を、顧客の種類(民間企業向け=Commercial/政府・公的機関向け=Government)と地域(米国/米国外)の2軸で開示している。連結売上高の増加額は9億3,177万ドル。このうち米国が8億4,046万ドル、率にして90.2%を占めた(筆者計算)。成長の集中度はこの1行に凝縮されており、米国外事業は増収額の1割弱しか担っていない。米国売上が連結に占める比率は前年同期の73%から81%へ上昇した。

牽引役は米国の民間企業向けで、前年同期比+149%と前四半期の+133%から加速した。前四半期比でも+28%で、こちらも前四半期の+18%から加速している。前年同期比と前四半期比の双方で伸びが高まっており、「加速」という表現はどちらの基準でも成立する(筆者分析)。米国の政府・公的機関向けも前年比+90%と高水準を保ち、両者の売上規模はこの四半期でほぼ肩を並べた。

図1:四半期売上高と前年同期比の推移(引用:パランティア各四半期の決算プレスリリース)

表2:売上高の内訳(単位:百万ドル)

区分

Q2 FY2026

構成比

Q2 FY2025

前年比

前四半期比

増収額

増収寄与率

米国の民間企業向け

764

39.5%

306

+149%

+28%

+458

49.2%

米国の政府・公的機関向け

809

41.8%

426

+90%

+18%

+383

41.1%

米国 計

1,573.0

81.3%

732.6

+114.7%

+23%

+840.5

90.2%

米国外の民間企業向け

182

9.4%

約145

+26%

+2%

+37

4.0%

米国外の政府・公的機関向け

181

9.3%

約127

+42%

+5%

+54

5.8%

米国外 計

362.4

18.7%

271.1

+33.7%

---

+91.3

9.8%

連結合計

1,935.5

100.0%

1,003.7

+92.8%

+19%

+931.8

100.0%

(参考)民間企業向け 計

945.4

48.8%

450.7

+109.8%

+22%

+494.7

53.1%

(参考)政府・公的機関向け 計

990.0

51.2%

553.0

+79.0%

+15%

+437.0

46.9%

引用:パランティア Form 10-Q(2026年6月30日期末)地域別売上同 セグメント別データQ2 2026 決算プレスリリースQ2 2026 決算説明会トランスクリプト
注1:「米国 計」「米国外 計」「連結合計」「民間企業向け 計」「政府・公的機関向け 計」は四半期報告書の確定値(千ドル単位)を百万ドルに換算したもの。米国の民間企業向け・米国の政府・公的機関向けはプレスリリースの百万ドル単位開示、米国外の民間企業向け・米国外の政府・公的機関向けは決算説明会でのCFO説明値(会社説明)であり、いずれも丸め値のため小計と一致しない場合がある。
注2:米国外の民間企業向け・米国外の政府・公的機関向けの前年同期は、当期の会社開示値と会社説明の前年比から逆算した概数(筆者計算)。
注3:増収寄与率は各区分の増収額を連結増収額9億3,177万ドルで割った値(筆者計算)。丸め値を用いているため合計は四捨五入の範囲でずれる。

図2:米国コマーシャルのTCVと残存契約価値(RDV)の推移(引用:パランティア各四半期の決算プレスリリース)

会計基準上の受注残に相当する残存履行義務(RPO)は、2026年6月30日時点で49億ドル、前年同期比+103%(会社説明)。四半期報告書は、このうち約43%を今後12か月、36%を13〜36か月かけて収益認識する見込みだと記している。ただしRPOには当初契約期間が12か月以下の契約と、政府契約に多い解約条項(termination for convenience)以降の金額が含まれない。対象範囲が民間企業向け中心に偏る以上、全社の受注動向を代表する先行指標にはならない(筆者の解釈)。

既存顧客からの売上拡大を示すネットダラーリテンション(NDR=直近12か月の売上のうち前年の直近12か月にも顧客だった企業からの分を、同じ顧客群の前年直近12か月売上で割った比率)は157%で、前四半期から7pt上昇した(会社説明)。四半期どうしの比較ではなく全社ベースの指標のため、米国の民間企業向けの顧客数653社(前年同期比+35%)とは直接突き合わせられないが、既存顧客からの売上拡大が続いている事実は確認できる(筆者分析)。

3. 非GAAP営業利益率は62%へ15.4pt改善した一方、GAAP粗利率は前四半期比で2.1pt低下した

収益性は営業段階で大きく改善した。調整後営業利益率は前年同期の46.3%から61.7%へ15.4pt、GAAP営業利益率は26.8%から47.1%へ20.3pt上昇している(筆者計算)。会社が重視するRule of 40(増収率と調整後営業利益率の合計。40超で成長と収益性の両立とされる指標)は155となった。

ただし粗利段階は逆の動きをしている。GAAP粗利率は前年同期比で3.9pt改善する一方、前四半期比では2.1pt低下し、直近5四半期のピークに届いていない。売上原価が前四半期比+37.6%と、売上高の伸び(+18.6%)を上回ったためである(筆者計算)。決算説明会でCFOのデイビッド・グレイザー氏は、政府顧客のクラウドホスティングを自社で引き受けたことが調整後粗利率に影響したと説明した(会社説明)。

表3:利益率の推移

指標

Q2 FY2025

Q3 FY2025

Q4 FY2025

Q1 FY2026

Q2 FY2026

GAAP粗利率

80.8%

82.5%

84.6%

86.8%

84.7%

調整後粗利率

82.3%

83.8%

86.0%

87.9%

86.3%

GAAP営業利益率

26.8%

33.3%

40.9%

46.2%

47.1%

調整後営業利益率

46.3%

50.9%

56.8%

60.2%

61.7%

GAAP純利益率

32.6%

40.3%

43.3%

53.3%

54.9%

調整後FCFマージン

56.7%

45.7%

56.3%

56.6%

63.1%

Rule of 40(会社開示)

94

114

127

145

155

引用:Q2 2026Q1 2026Q4 2025Q3 2025Q2 2025 の各決算プレスリリース
注1:Rule of 40を除く各利益率は、各四半期のプレスリリース掲載の確定値(千ドル単位)から筆者が算出した。会社が公表する丸め値(例:調整後粗利率86%)とは小数第1位で差が出る場合がある。
注2:調整後粗利率は、売上総利益に売上原価に含まれる株式報酬費用を加算して算出した(筆者計算)。
注3:Rule of 40は会社が各四半期のプレスリリースで開示した数値をそのまま記載した。

EPS:非GAAP EPSがGAAP EPSを下回る逆転が2四半期続いている

非GAAP EPSは株式報酬費用を足し戻すぶん、普通はGAAP EPSより大きくなる。パランティアは逆だ。開示上はどちらも0.41ドルだが、未丸め値ではGAAPが0.4134ドル、非GAAPが0.4076ドル。逆転は前四半期にも起きている(筆者計算)。

原因は税金の置き方にある。非GAAPは実際の税負担ではなく「長期実効税率23%で課税されたら」という仮定を置くが、GAAP上の法人税費用は1,538万ドル、税引前利益の1.4%にすぎない。株式報酬費用2億6,521万ドルと関連雇用者負担税1,726万ドルの計2億8,247万ドルを足し戻しても、税効果調整2億9,736万ドルの控除が上回り、差引1,489万ドルのマイナスになる。株式報酬の希薄化を嫌う投資家にとって、この企業の非GAAP EPSはGAAP EPSより甘い数値にはなっていない(筆者の解釈)。

希薄化はほとんど効いていない。希薄化後加重平均株式数は25億6,291万株から25億6,869万株へ1.0023倍。GAAP EPSの3.2428倍にこれを掛けると3.2501倍となり、純利益(普通株主帰属)の伸びと一致する(筆者計算)。

EPSを押し上げた一時要因もある。グレイザー氏は決算説明会で、保有するSpaceX株の評価益がGAAP EPSを0.03ドル、非GAAP EPSを0.02ドル押し上げたと説明した(会社説明)。四半期報告書の評価益6,600万ドルに対し上期累計は6,400万ドル。前四半期は約200万ドルの評価損で、毎期出る項目の金額が当四半期に突出しただけである(筆者分析)。

キャッシュフローと資本配分:無配・自社株買いなしで、手元資金は92億ドルまで積み上がった

営業キャッシュフローは12億1,617万ドル、前年同期比+125.5%。ここに株式報酬関連の雇用者負担税の支払額1,875万ドルを加え、有形固定資産の取得額1,455万ドルを差し引いた12億2,036万ドルが調整後フリーキャッシュフローである(筆者計算)。

図3:調整後フリーキャッシュフローとマージンの推移(引用:パランティア各四半期の決算プレスリリース)

現金・現金同等物と短期米国債の合計は92億ドル(会社開示)。5億ドルの与信枠を持つリボルビング・クレジット・ファシリティの引出残高はゼロと四半期報告書に記載されている。配当はなく、上期のキャッシュフロー計算書に自社株買いの支出もない。2025年上期には3,659万ドルの自社株取得があり、資本配分は還元から手元流動性の積み増しへ振れた(筆者分析)。

運転資本では、売上債権回転日数が当四半期69.8日、前年同期67.8日、前四半期77.5日(筆者計算)。前四半期に伸びた回収期間は戻っている。

4. 第3四半期ガイダンスは売上中心値21億6,200万ドルで前年同期比+83%だが、含意される調整後営業利益率は約59.9%へ1.9pt低下する

実績は会社の前回ガイダンス中心値も市場予想も上回った。その延長線上で示された次の見通しを整理する。

第3四半期の売上ガイダンス中心値は前年同期比+83.1%、前四半期比+11.7%(筆者計算)。前年同期比では当四半期の+92.8%から鈍化する一方、前四半期比では二桁の伸びを維持する。記事全体で成長率を前年同期比で語っている以上、方向の判断も前年同期比で揃えるべきであり、ガイダンスは「鈍化」を織り込んだ水準と読むのが素直である(筆者の解釈)。

より注意したいのは利益率のほうで、売上と調整後営業利益のガイダンス中心値から逆算される調整後営業利益率は約59.9%と、当四半期実績の61.7%から1.9pt低下する。グレイザー氏は決算説明会で、新規採用の入社時期の季節性や製品・マーケティング施策により第3四半期は費用が大きく増える見込みだと述べており、これと整合する(会社説明)。当四半期の調整後費用は7億4,100万ドルで前四半期比+14%、前年同期比+37%だった(会社説明)。

通期ガイダンスは売上・米国コマーシャル売上・調整後営業利益・調整後フリーキャッシュフローの4項目すべてで引き上げられた。売上の中心値は5月時点の76億5,600万ドルから4億9,800万ドル、率にして+6.5%の引き上げ。会社はこれを過去最大の通期売上ガイダンス引き上げだと説明している(会社説明)。会社はEPSガイダンスを提示していないため、以下の非GAAP EPS試算値は筆者が機械的に計算した参考値である。

手順は、調整後営業利益に受取利息と「その他の収益(費用)」を加えて調整後税引前利益とし、税率23%を適用したうえで非支配持分利益を差し引き、希薄化後株式数で割るというもの。当四半期に当てはめると10億4,606万ドル、1株あたり0.4072ドルとなり、会社開示の調整後純利益・EPSと0.1%以内で一致する(筆者計算)。通期は、上期の受取利息と「その他の収益」の実績合計3億394万ドルに下期の受取利息1億7,700万ドルを加え、予測不能な「その他の収益」は下期ゼロ、非支配持分は通期約2,000万ドル、希薄化後株式数は25億7,200万株と置いた。

表4:会社ガイダンス(2026年8月3日発表)

指標

レンジ

中心値

比較対象

前年比/修正幅

市場予想

Q3 FY2026 売上高

21.60〜21.64億ドル

21.62億ドル

前年同期 11.81億ドル

+83.1%

---

Q3 FY2026 調整後営業利益

12.92〜12.96億ドル

12.94億ドル

前年同期 6.01億ドル

+115.5%

---

(含意)Q3 調整後営業利益率

---

約59.9%

Q2 FY2026実績 61.7%

▲1.9pt

---

通期FY2026 売上高

81.50〜81.58億ドル

81.54億ドル

従来 76.56億ドル

+4.98億ドル(+6.5%)/前年比+82.2%

---

通期FY2026 米国コマーシャル売上高

34.24億ドル超

---

従来 32.24億ドル超

前年比+134%以上

---

通期FY2026 調整後営業利益

48.89〜48.97億ドル

48.93億ドル

従来 44.46億ドル

+4.47億ドル

---

通期FY2026 調整後FCF

45.0〜47.0億ドル

46.0億ドル

従来 43.0億ドル

+3.0億ドル

---

(参考)通期FY2026 非GAAP EPS

---

約1.60ドル(筆者試算)

FY2025実績 0.75ドル

+113%

---

引用:Q2 2026 決算プレスリリースQ1 2026 決算プレスリリース(従来ガイダンス)Q3 2025 決算プレスリリース(前年同期実績)
注1:市場予想を「---」としたのは、ガイダンス発表時点のQ3売上コンセンサスが報道により19.97億ドル〜21.8億ドルと大きく開いており、同一集計元・同一時点の値を特定できなかったため。当四半期実績に対する市場予想は表1に記載した。
注2:含意される調整後営業利益率は、調整後営業利益の中心値を売上高の中心値で割った値(筆者計算)。
注3:通期非GAAP EPSは会社が提示しておらず、本文に示した手順と前提による筆者試算値。同じ手順を当四半期に当てはめると実績と0.1%以内で一致することを確認している。下期の「その他の収益」をゼロではなく1億ドルと置くと約1.63ドルとなる。

5. 手元資金92億ドルと受注残の厚みが支えになる一方、成長率そのものが翌年のハードルになる

以下は当四半期の開示から筆者が整理したポイントである。判断の材料を有利・不利に分けて並べたもので、優劣を採点したものではない。

ポジティブ要因

  • 受注が売上に先行して積み上がっている。米国コマーシャルの残存契約価値は前年同期比+124%と、同事業の売上成長率に近い伸びを維持している。獲得済み契約の消化だけで一定期間の売上が見込める状態にある。
  • 既存顧客の単価上昇が成長の主因になっている。ネットダラーリテンションは157%で、米国コマーシャル顧客数の伸び(+35%)を大きく上回る。新規開拓に依存しない成長は、営業費用の効率という点で有利に働きやすい。
  • 営業利益率が売上規模の拡大と同時に上がっている。調整後営業利益率は直近5四半期にわたって一貫して上昇している。規模拡大に伴う費用増を増収が上回る状態が続いている。
  • キャッシュ創出が会計上の利益に追いついている。調整後フリーキャッシュフローのマージンは63.1%と、調整後営業利益率を上回った。利益が現金化されないタイプの成長ではない。
  • 財務の余力が大きい。手元資金は92億ドル、リボルビング・クレジット・ファシリティの引出残高はゼロ。景気後退や資金調達環境の悪化に対する耐性は高い。

リスク要因

以下は筆者が整理したリスクシナリオであり、発生を予測するものではない。

  • 成長率そのものが翌年の比較対象になる。米国コマーシャルは1年で売上規模が2.5倍になった。同じ増収額を積んでも前年比の伸びは低下するため、成長率の逓減は構造的に避けられない。
  • 粗利率が前四半期比で低下した。政府顧客のクラウドホスティングを引き受けたことによる原価増が、今後どこまで継続するかは開示されていない。同種の案件が増えれば、営業利益率の改善ペースは鈍りうる。
  • 米国への集中度が高い。連結売上の81%が米国で、国際事業の伸びは連結の3分の1程度にとどまる。米国の政府予算や企業のAI投資が減速した場合、代替する成長源が乏しい。
  • 契約は任意解約条項を伴う。会社は四半期報告書で、多くの顧客に12か月未満の通知による任意解約を認めていると記している。TCVやRDVはオプション行使と非解約を前提とした数値であり、そのまま将来売上として読むことはできない。
  • 売上債権の顧客集中が高い。四半期報告書によれば、1社で売上債権全体の27%を占めており、2025年12月末の25%から上昇した。特定顧客の支払遅延が運転資本に与える影響は小さくない。
  • 株式報酬費用が高水準で推移している。当四半期は前年同期の1億5,997万ドルから増加した。GAAP利益を圧迫すると同時に、継続的な希薄化要因でもある。

6. 決算はbeat-and-raise。それでも翌営業日に+29.5%という反応が出たのは、決算前の株価が52週高値を4割近く下回る水準にあったためである

実績・ガイダンスの双方が上振れした、いわゆるbeat-and-raiseの決算だった。確定事実だけを並べれば、増収率は上場以来の最高値を更新し、GAAP営業利益・GAAP純利益・調整後フリーキャッシュフローがそろって10億ドルを超え、通期の4項目すべてが上方修正された。

株価の動きは次のとおり。決算発表前日にあたる8月3日の終値は125.65ドルで、この日は前日比+2.10%だった。発表後の時間外取引では約144.45ドルまで買われ、これは前日終値比で約+15.0%にあたる(報道ベース)。翌8月4日の終値は162.66ドル、前日比+29.45%。その次の8月5日は158.43ドルで▲2.60%と小反落した。直近の8月25日終値は172.73ドルで、決算前日比では+37.5%となる(筆者計算)。

図4:決算発表前後の株価推移(引用:stockanalysis.com、データ提供 S&P Global Market Intelligence)

なぜここまで動いたのか。ひとつは、決算前の期待値が極端に低かったことである。決算前日の終値は52週高値207.52ドル(報道ベース)を39.5%下回り、6月25日に付けた直近安値106.37ドルから18.1%高いだけの水準にとどまっていた。パランティアは年前半にソフトウェア業界全体を襲ったAIによる既存事業破壊への懸念で売られており、決算はその懸念に対する直接的な反証として受け止められた。

もうひとつは需給である。ブルームバーグは、決算翌日の上昇で空売り筋が約30億ドルの損失を被ったと報じた。空売り残高は直近で6,807万株、発行済株式の2.83%と、前月の7,788万株から減少している(いずれも報道・データベンダーベース)。売り方の買い戻しが値幅を増幅した可能性は高い(筆者の解釈)。米銀バンク・オブ・アメリカのアナリスト、マリアナ・ペレス・モラ氏は、米国コマーシャル事業の想定引き上げを理由に2026年以降の業績予想を上方修正している(報道ベース)。

報道の読み方で一点だけ整理しておきたい。「EPSが市場予想の0.34ドルに対して0.41ドル」という比較を見かけるが、この実績値はGAAP EPSと非GAAP EPSが偶然同じ水準に丸められた結果であり、比較対象の予想値は非GAAP EPSに対するものである。本稿では両者を分けて記載した。

表5:株価とバリュエーション(2026年8月25日終値ベース)

項目

数値

決算発表前日終値(2026年8月3日)

125.65ドル(前日比+2.10%)

発表当日の時間外気配

約144.45ドル(前日終値比+15.0%)

翌営業日終値(8月4日)

162.66ドル(+29.45%)

その次の営業日終値(8月5日)

158.43ドル(▲2.60%)

直近終値(8月25日)

172.73ドル(決算前日比+37.5%)

時価総額

4,150.8億ドル

実績PER(TTM・GAAP)

147.1倍

実績PER(TTM・非GAAP)

144.0倍

予想PER(FY2026・筆者試算EPS基準)

約108倍

実績PSR(TTM)

67.4倍

予想PSR(通期ガイダンス中心値基準)

50.9倍

配当利回り

---(無配)

現金・現金同等物および短期米国債(会社開示)

92億ドル

引用:stockanalysis.com 株価履歴同 統計・バリュエーション(いずれもデータ提供 S&P Global Market Intelligence)、Q2 2026 決算プレスリリース
注1:TTM(直近12か月)はQ3 FY2025からQ2 FY2026までの4四半期であり、前年同期にあたるQ2 FY2025は含まれない。TTM売上高61億5,594万ドル、TTM純利益(普通株主帰属)30億1,669万ドル、TTM調整後純利益30億8,013万ドル(いずれも筆者計算)。
注2:実績PERは、TTM純利益を直近四半期の希薄化後加重平均株式数25億6,869万株で割ったEPSに基づく(筆者計算)。TTMには当四半期の株式未実現評価益6,600万ドルが含まれており、この分だけ利益が押し上げられている。
注3:予想PERは第4章の筆者試算による非GAAP EPS約1.60ドルを用いた。データベンダーが公表する予想PER(8月26日時点で90.75倍)は基準となる会計年度が明示されておらず、本稿の試算値とは前提が異なる。
注4:当サイトは投資助言を行わないため、割安・割高の判断や目標株価は提示しない。アナリストの目標株価コンセンサスも同様の理由で記載していない。

筆者の解釈としては、この決算の要点は増収率そのものよりも、増収が利益率とキャッシュフローの改善を伴っている点にある。売上が9割増える局面では先行投資で利益率が横ばいか低下するのが通常だが、当四半期は営業段階でもキャッシュ段階でもマージンが上がった。一方で粗利率の前四半期比低下と次期ガイダンスが含意する利益率の低下は、その拡大が費用増と無縁ではないことを示している。

次回決算までの確認ポイント

  1. 粗利率が前四半期の水準へ戻るか。クラウドホスティング引き受けによる原価増が一時的か、継続するコスト構造の変化かを、第3四半期の売上原価と調整後粗利率で確認する。
  2. 第3四半期の調整後営業利益率が、ガイダンスの含意する約59.9%を上回るか。費用の季節的な増加を増収がどこまで吸収するかが分かれ目になる。
  3. 米国コマーシャルのTCVとRDVの伸びが売上成長率を上回り続けるか。受注の伸びが売上を下回り始めた時点が、成長率逓減の実質的な起点になる。
  4. 国際事業が加速に転じるか。国際コマーシャルの前四半期比+2%という伸びが続く限り、米国集中のリスクは解消しない。
  5. 売上債権の顧客集中比率と回転日数。特定顧客への依存度がさらに上昇するか、回転日数が再び長期化するかを四半期報告書で確認する。

出典

免責

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。金額はすべて米ドル建てで、会社の米国会計基準(US GAAP)に基づいています。パランティア・テクノロジーズの会計年度は暦年と一致し、本記事が対象とする第2四半期は2026年6月30日を期末とします。同社は調整後営業利益、調整後営業利益率、調整後フリーキャッシュフロー、調整後EBITDA、調整後純利益、調整後EPSといった非GAAP指標を開示しており、本記事でもこれらを併記していますが、非GAAP指標の定義は企業によって異なるため、他社との単純比較はできません。株価、時価総額、バリュエーション指標、市場予想は執筆時点のものであり、その後変動します。投資判断はご自身の責任において行ってください。