クラウド・その他サービス売上が前年同期比281%増。コアの各指標はいずれも会社ガイダンスを上回る着地。一方で第3四半期ガイダンスは前四半期比+2.4%にとどまり、通期の引き上げ幅2,500万ドルのうち63%は当四半期の上振れ分。それでも翌営業日の株価は11.85%安。GAAP売上高とコア売上高の差が2,976万ドルに開いた四半期だった。

※金額は米ドル建て、特記なき限り会社のUS GAAPベース。bp(ベーシスポイント)は0.01パーセントポイントを表す。市場予想は報道ベースで、指標ごとに集計元が異なる(各表の引用元を参照)。本文では出所を、会社の確定値、決算説明会での発言(会社説明)、報道ベースの数値(報道ベース)、筆者自身の計算・推定(筆者計算・筆者試算・筆者分析・筆者の解釈)に分けて記載する。

1. 決算サマリー:コアの全指標が会社ガイダンスを上回った一方、GAAP粗利率は14.2%まで低下した

Cerebras Systems(CBRS)は2026年8月12日、2026年第2四半期(4〜6月期)の決算を発表した。会社が主指標とする「コア」ベースでは売上高・粗利率・営業利益率のすべてが自社ガイダンスを上回り、通期見通しも引き上げられた。コアは会社独自の非GAAP指標で、株式報酬と顧客ワラント償却、データセンター費用の立替分などをGAAPから加減したものを指す。一方、US GAAPベースでは営業損失が4億7,723万ドルに拡大し、粗利率は前年同期の31.1%から大きく低下している。この決算を読むうえでの中心的な論点は、GAAPとコアの差が何によって生じているかにある。

表1:決算サマリー(2026年第2四半期、単位:百万ドル・ドル)

指標

実績

前年同期

前年比

市場予想

対市場予想

GAAP売上高

180.11

103.32

+74.3%

---

---

GAAP純損益

▲450.53

+309.51

---

---

---

参考:単純差引参考値(税効果未調整)

▲450.53

▲53.82

---

---

---

GAAP希薄化後EPS

▲2.98

+1.91

---

---

---

コア売上高

209.87

103.32

+103.1%

194.16

+8.1%

参考:筆者試算EPS(会社は非開示)

▲0.05

---

---

---

---

コア粗利率

40.6%

31.2%

+940bp

---

---

コア営業利益率

▲16.0%

▲42.5%

+2,600bp

---

---

引用:Cerebras Systems 2026年第2四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)/市場予想はZacks Investment Researchの独自集計(TradingView経由、2026年8月13日付)で、会社開示値ではない
注1:GAAP純損益の前年比は「---」とした。前年同期の純利益3億951万ドルにはフォワード契約の消滅益3億6,334万ドルが含まれ、当四半期には対応する項目がないため、比較可能な成長率が作れない。実力ベースの前年比較はコア各行が担う。
注2:「参考:単純差引参考値」の前年同期▲5,382万ドルは、税引後の純利益3億951万ドルから税引前表示のフォワード契約消滅益3億6,334万ドルを単純に差し引いた混合値(筆者計算)。GAAP値でも会社の非GAAP値でもなく、本文の業績比較には用いていない。なお前年同期の法人税費用は166万ドルにとどまる。
注3:「参考:筆者試算EPS」▲0.05ドルは、コア純損失690万ドルをGAAP加重平均株式数1億5,097万株で除した筆者計算値(▲0.0458ドル)。会社はコアEPSを定義・開示していない。Zacksは同四半期の1株損失を▲0.04ドル、予想を▲0.21ドルとしているが、算定方法が筆者試算と一致しないため、対市場予想の欄は設けていない。
注4:コア粗利率・コア営業利益率の前年比は会社開示値。原数値から計算するとコア営業利益率の改善幅は+2,647bpとなる(筆者計算)。
注5:市場予想はコア売上高に対するもの。GAAP売上高およびGAAP EPSのコンセンサスは、データ取得時点で確認できなかった。

2. クラウド・その他サービスが281%増で増収額の121%を稼ぎ、ハードウェアは前四半期比51.1%減となった

GAAP売上高は前年同期比74.3%増。増収額7,679万ドルの内訳は、クラウド・その他サービスが+9,296万ドル、ハードウェアが▲1,618万ドルであり、両者を合計すると増収額に一致する。クラウド・その他サービスの寄与額は全社の増収額を上回っており、比率にすると121.1%になる(筆者計算)。つまり当四半期の増収はすべてこの区分によるもので、ハードウェアは全社の成長を押し下げる側に回った。

表2:セグメント別・地域別のGAAP売上高(単位:百万ドル)

区分

2026年Q2

構成比

2025年Q2

前年比

2026年Q1

前四半期比

ハードウェア

54.12

30.0%

70.30

▲23.0%

110.59

▲51.1%

クラウド・その他サービス

125.99

70.0%

33.03

+281.5%

82.81

+52.1%

合計

180.11

100.0%

103.32

+74.3%

193.41

▲6.9%

地域別:米国

83.98

46.6%

30.21

+178.0%

70.10

+19.8%

地域別:EMEA

95.75

53.2%

73.03

+31.1%

123.17

▲22.3%

地域別:その他

0.38

0.2%

0.08

+398.7%

0.14

+168.5%

地域別:合計

180.11

100.0%

103.32

+74.3%

193.41

▲6.9%

引用:Cerebras Systems 2026年第2四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)および同 四半期報告書(Form 10-Q)注記4/2026年Q1のセグメント別は同 2026年第1四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)、地域別は同 2026年第1四半期 四半期報告書(Form 10-Q)注記4
注1:構成比は四捨五入のため合計が100.0%にならない場合がある。セグメント別・地域別のいずれも合計は連結売上高に一致する。
注2:2026年Q1の地域別は第1四半期報告書の開示値(米国7,010万ドル、EMEA1億2,317万ドル、その他14万ドル)。第2四半期報告書の上期累計値から当四半期を差し引いた値とは各項目で1万ドル未満の差があるが、本表は第1四半期の開示値を採用している。
注3:地域は顧客の請求先所在地で区分される。EMEAの構成比は前年同期の70.7%、前四半期の63.7%から低下している。

売上構成は1年で入れ替わった。ハードウェアの構成比は前年同期の68.0%から30.0%へ、クラウド・その他サービスはその裏返しで推移している。ただしこれは前年同期比で見た場合の話で、前四半期比ではハードウェアが半減し、GAAP売上高そのものも減少した。コアベースでもハードウェアは前四半期比26.4%減、クラウド・その他サービスは60.1%増で、方向は同じである。地域別でも米国が19.8%増える一方でEMEAは22.3%減っており、四半期ごとの振れ幅は大きい。

図1:GAAP売上構成の推移(引用:Cerebras Systems 2026年第1四半期・第2四半期決算発表)

会社側もこの振れを織り込んでいる。Cerebras Systemsの最高財務責任者、ボブ・コミン氏は決算説明会で、重視しているのは構成比ではなくコア売上高の合計だと述べている。構成比は大型クラウド容量の追加やハードウェア出荷の時期によって四半期ごとに大きく変動しうる、というのがその理由だ(会社説明。以下、決算説明会の発言はInvesting.com掲載の書き起こしによる)。同氏は数億ドル規模の後期段階のハードウェア商談が複数あるとも述べている。

先行指標になるのが残存履行義務(RPO)である。契約済みでまだ売上に計上していない金額を指し、四半期報告書には254億ドルと開示されている。2026年通期コア売上高ガイダンス中心値の28.7倍にあたる。

ただし全額がすぐ売上になるわけではない。同じ注記は、約22%を2028年6月末までの2年で、43%を続く2年間で認識する見込みとしたうえで、顧客の要請などで時期は変動しうると断っている。最初の2年に入る約55億8,800万ドルを均等に割れば年平均は約28億ドル、通期ガイダンス中心値の約3.2倍である(筆者計算)。総額で見れば28.7倍、最初の2年で見れば年3.2倍。RPOはどの期間で切るかによって先行きの印象が大きく変わる。

3. コア粗利率は前年同期比940bp改善したが、前四半期比では590bp低下し、GAAP粗利率は14.2%まで下がった

収益性は、見る指標によって評価が正反対になる。コア粗利率は会社ガイダンス36〜38%を上回り、前年同期比では940bpの改善。一方でGAAP粗利率は14.2%と、前年同期からも前四半期の44.6%からも大幅に低下した。差の主因は、売上から控除される顧客ワラント償却4,426万ドルと、売上原価に計上された株式報酬1,535万ドルである。調整はこの2項目だけではない。パススルー売上1,450万ドルの控除と、パススルー費用1,408万ドル・IPO関連給与税47万ドルの足し戻しも加わり、五項目計5,966万ドルが粗利益段階の差になる。

表3:利益率と損益指標の推移

指標

2026年Q2

2026年Q1

2025年Q2

前四半期比

前年同期比

GAAP粗利率

14.2%

44.6%

31.1%

▲3,040bp

▲1,690bp

コア粗利率

40.6%

46.5%

31.2%

▲590bp

+940bp

GAAP営業利益率

▲265.0%

▲7.8%

▲55.3%

▲25,720bp

▲20,970bp

コア営業利益率

▲16.0%

▲1.8%

▲42.5%

▲1,420bp

+2,600bp

調整後EBITDA(百万ドル)

▲53.07

+12.73

▲38.30

▲65.80

▲14.77

引用:Cerebras Systems 2026年第2四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)/2026年Q1は同 2026年第1四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)
注1:利益率の水準は原数値から算出した筆者計算値。会社はGAAP営業利益率を2026年Q2「(265%)」、2026年Q1「(8)%」、2025年Q2「(55%)」、コア営業利益率を同順に「(16%)」「(2)%」「(42)%」と整数で開示している。
注2:コア粗利率・コア営業利益率の前年同期比は会社開示値。原数値ベースではコア営業利益率が+2,647bpとなり、丸めの差が生じる。それ以外の変化幅はすべて原数値ベース(筆者計算)。
注3:調整後EBITDAは比率ではないため、変化幅の列には金額差(百万ドル)を記載している。

GAAP売上高1億8,011万ドルからパススルー売上を控除し、顧客ワラント償却を足し戻すとコア売上高になる。差額は2,976万ドルで、GAAP売上高の16.5%に相当する。顧客ワラントは顧客に付与した新株予約権を売上のマイナスとして処理するもので、四半期報告書によれば6月末残高は2031年10月まで売上の控除として計上され続ける。前四半期の同償却は205万ドルにとどまっており、当四半期は規模が突出して大きい。

営業段階の差はさらに大きい。GAAP営業損失とコア営業損失3,361万ドルの差は4億4,362万ドルで、うち株式報酬が3億7,701万ドルを占める。このうち営業費用に計上されたのは3億6,166万ドル。GAAP営業費用5億279万ドルに対する比率は71.9%、IPO関連給与税を含めると76.4%になる(筆者計算)。

図2:GAAP営業損失からコア営業損失への調整(引用:Cerebras Systems 2026年第2四半期決算発表)

コア粗利率を前四半期と比べると46.5%から590bp低下している。コミン氏は、需要に応えるためクラウド顧客から自社システムを一時的に借り戻しており、そのコストがなければ約500bp高かったと説明する(会社説明)。同氏は第3四半期が底で、第4四半期には自社保有システムの稼働により改善するとも述べている。裏を返せば、当四半期の水準は直近のピークに届いておらず、会社の見通しどおりなら第3四半期はさらに下がる。

EPS:GAAPと筆者試算値で2.93ドルの開きがあり、株式数が四半期で2.4倍になった

GAAP希薄化後EPSは▲2.98ドル。コア純損失690万ドルを同じ加重平均株式数で割った筆者試算値は▲0.05ドルとなり、その差は2.93ドルに達する。差の内訳は営業段階の調整4億4,362万ドルがほぼすべてで、恒常的に発生する株式報酬・顧客ワラント償却と、当四半期にIPOに関連して発生した雇用者側給与税2,231万ドルに分かれる。株式報酬は前四半期も959万ドル発生している毎期の費用である。

株式数の影響も無視できない。加重平均株式数は前四半期の6,281万株から2.404倍になった。5月15日に完了したIPO(取引開始は5月14日)で総額約63.8億ドルを調達し、優先株が普通株へ転換したためである。損失計上期のため利益成長率の検算は成立しないが、同じ利益額でも1株当たりの金額は以前より小さくなる。

キャッシュフローと資本配分:上期のフリーキャッシュフローは▲5億9,636万ドル

キャッシュフロー計算書は上期累計でのみ開示されている。営業CFは▲4,749万ドル、設備投資(有形固定資産の取得)は5億4,887万ドルで、差引のフリーキャッシュフローは▲5億9,636万ドル。ここから第1四半期の開示値(営業CF+1,234万ドル、設備投資1億3,197万ドル)を差し引けば、第2四半期単独の姿が出る。営業CFが▲5,982万ドル、設備投資が4億1,690万ドル、フリーキャッシュフローが▲4億7,673万ドルである(筆者計算)。

流動性は厚いが、将来の資金制約がないとまでは言えない。現金及び現金同等物、制限付き現金、投資有価証券の合計は86億623万ドルで、前四半期末の32億6,072万ドルから大きく増えた。ただしこのうち6億8,468万ドルは制限付き現金であり、データセンター容量の確保に伴う契約上の支払義務も残る。有利子負債は運転資金ローン9億1,824万ドルで、OpenAIから2026年1月に実行された約10億ドルの担保付約束手形にあたる。8億5,000万ドルのリボルビング枠は、四半期報告書によれば6月30日時点で借入がない。自社株買いと配当はいずれも実施していない。

4. 通期ガイダンスの2,500万ドル引き上げは、その63%が当四半期の上振れ分で、下期の上積みは913万ドルにとどまる

会社は前四半期の決算発表で、第2四半期のコア売上高を約1億9,400万ドル、コア粗利率36〜38%、コア営業利益率▲30〜▲32%としていた。実績はコア売上高が8.18%上振れ、粗利率・営業利益率もレンジ上限を超えており、コア指標では三点とも上回った。

表4:ガイダンス(単位:百万ドル)

指標

今回ガイダンス

中心値

従来ガイダンス

2026年Q2実績

対Q2実績

Q3 コア売上高

214〜216

215.0

提示なし(今回が初提示)

209.87

+2.4%

Q3 コア粗利率

38〜40%

39.0%

提示なし(今回が初提示)

40.6%

▲160bp

Q3 コア営業利益率

▲25〜▲23%

▲24.0%

提示なし(今回が初提示)

▲16.0%

▲800bp

通期 コア売上高

880〜890

885.0

855〜865

---

---

通期 コア粗利率

41〜43%

42.0%

38〜41%

---

---

通期 コア営業利益率

▲19〜▲17%

▲18.0%

▲32〜▲28%

---

---

参考:Q4 コア売上高(筆者による機械的逆算)

262.8〜274.8

268.8

算出不能

---

---

引用:Cerebras Systems 2026年第2四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)/従来ガイダンスは同 2026年第1四半期決算発表(Form 8-K Exhibit 99.1)
注1:第3四半期のガイダンスは今回が初めての提示であり、従来値からの引き上げ・引き下げではない。会社はEPSガイダンスを提示しておらず、GAAPベースの見通しも「将来予測ベースでは調整項目を合理的に見積もれない」として開示していない。したがってEPSガイダンスの試算は行っていない。
注2:Q4は会社ガイダンスではなく、通期ガイダンスから上期実績4億121万ドルとQ3ガイダンスを差し引いた筆者による機械的逆算値。中心値は885.0−401.2−215.0=268.8。従来ガイダンスは第3四半期の提示がなかったため、従来のQ4単独値は算出できない。算出できるのは下期合計までで、860.0−Q1実績191.3−Q2ガイダンス194.0=474.7となり、今回の下期483.8との差が下期の上積み9.1に一致する。
注3:ガイダンスに対する市場予想は、指標別の集計値が確認できなかったため列を設けていない。

通期コア売上高は中心値で2,500万ドル引き上げられた。ただし内訳を分解すると、当四半期の上振れ分1,587万ドルが下期以降を変えずに通期へ流れ込んだ部分が大きい。下期そのものの上積みは913万ドルで、引き上げ幅の36.5%にとどまる(筆者計算)。会社は下期の需要見通しを大きくは変えていない、という読み方になる。

四半期の形状も特徴的である。第3四半期ガイダンスの中心値は前四半期比+2.4%にすぎない。ここから機械的に逆算すると第4四半期のコア売上高は2億6,878万ドル(中心値)となり、第3四半期比では+25.0%が必要になる。年後半に大きく傾いた形状であり、達成にはデータセンター容量の立ち上げとハードウェア出荷の双方が計画どおり進む必要がある。

図3:コア売上高の四半期推移とガイダンス(引用:Cerebras Systems 2026年第1四半期・第2四半期決算発表、Q4は筆者による機械的逆算)

利益率の形状はさらに読みにくい。通期コア営業利益率▲18%(中心値)と上期実績▲9.25%から逆算すると、下期のコア営業損失は約1億2,200万ドルとなり、上期の3,713万ドルの約3.3倍になる。第3四半期ガイダンス中心値▲24%を当てはめると第4四半期は約▲26%の計算で、粗利率が改善する見通しの四半期に営業利益率は改善しない。中心値を機械的に逆算する限り、営業費用の増加ペースが売上を上回る前提が示唆される(筆者計算・筆者分析)。

5. RPO254億ドルという可視性の高さと、上位3社で売上の76%を占める集中度が同居している

以下は当四半期の開示から筆者が整理したポイントである。判断の材料を有利・不利に分けて並べたもので、優劣を採点したものではない。

ポジティブ要因

  • クラウドの粗利率がハードウェアを上回った。コアベースのクラウド・その他サービス粗利率は41.8%で前年同期比約1,600bpの改善、ハードウェアは38.8%で同510bpの改善。主力の入れ替わりが利益率の希薄化を伴っていない。
  • コア営業損失が前年同期から1,029万ドル縮小した。売上が2倍になるなかでの損失縮小であり、コア営業損失で見る限り改善が確認できる。
  • データセンター容量が制約になる局面で、流動性は確保されている。現金等・制限付き現金・投資有価証券の合計は上期の設備投資額の15.7倍にあたり、リボルビング枠も未使用である(筆者計算)。
  • 供給制約のある部材を使わない設計だと会社は説明している。ウェハスケール構造によりHBM(高帯域幅メモリ)、CoWoSパッケージング、3nm世代の製造プロセスのいずれも使用しないという内容で、第三者による独立検証ではない。
  • 推論用途の外への広がりを会社が打ち出し始めた。CrowdStrikeとの提携で、企業内トラフィックのインライン検査を新しい用途として位置付けている。売上への寄与額は開示されていない。

リスク要因

以下は筆者整理のリスクシナリオであり、発生を予測するものではない。

  • 顧客集中度が依然として高い。四半期報告書によれば、当四半期に売上の10%以上を占めた顧客は3社で、それぞれ34%、32%、10%の合計76%。前年同期は2社で70%と18%、合計88%だった。社数は増えたが上位への依存は続く。
  • 売上債権の集中はさらに強い。6月末時点で顧客Bが売上債権の57%、顧客Dが19%を占める。OpenAI向け売上5,680万ドルは総売上の31.5%にあたり顧客Bの比率とほぼ一致するため、顧客BはOpenAIと推定される(筆者分析。会社は顧客名を開示していない)。同社は運転資金ローンの貸し手でありワラント保有者でもある。
  • RPOの売上化は後ろ倒しである。2028年6月末までに認識される見込み額は約55億8,800万ドルにとどまり、残る約8割はそれ以降に配分されている。契約獲得と売上計上の間に長い時間差がある。
  • 調整後EBITDAは前年同期から1,477万ドル悪化した。コア営業損失は1,029万ドル改善したが、調整後EBITDAは売上から控除された顧客ワラント償却4,426万ドルを足し戻さない。減価償却費の足し戻し増1,878万ドルを加えても、その影響を打ち消せていない(筆者計算)。
  • コア粗利率60%超という長期目標には時間軸が示されていない。コミン氏は決算説明会で、高コストの借り戻しシステムが自社保有システムに置き換わるにつれてこの水準へ向かう、という趣旨の説明をしている(会社説明)。ただし到達時期は明示されていない。

6. 会社ガイダンス対比ではbeat-and-raiseだが、翌営業日の11.85%安は発表当日に11.63%上昇していた期待値の高さが一因とみられる(筆者の解釈)

確定事実だけで総括すると、この決算は会社ガイダンス対比ではbeat-and-raiseに分類される。コア指標は売上高・粗利率・営業利益率のすべてで自社ガイダンスを上回り、通期見通しが引き上げられた。第3四半期については今回が初めてのガイダンス提示であり、引き上げにはあたらない。

表5:株価とバリュエーション(2026年8月)

項目

数値

補足

8月11日終値

234.76ドル

前日比+2.07%

8月12日終値

262.06ドル

前日比+11.63%。引け後に決算発表

8月13日終値

231.01ドル

前日比▲11.85%

8月14日終値

218.98ドル

前日比▲5.21%

8月12日終値からの累計

▲16.44%

2営業日

時価総額

520.21億ドル

8月14日終値×発行済株式数2億3,756万株(同日時点)

有利子負債等

14.87億ドル

運転資金ローン9.18億ドル+オペレーティングリース債務5.69億ドル

控除する現金等

79.22億ドル

現金及び現金同等物67.42億ドル+投資有価証券11.79億ドル

企業価値(EV)

455.86億ドル

時価総額+有利子負債等−現金等

EV/2026年通期コア売上高

51.5倍

通期ガイダンス中心値8億8,500万ドル基準

EV/直近12か月GAAP売上高

67.0倍

直近12か月売上高6億8,067万ドル基準

予想PER・PEG

記載しない

会社はEPSガイダンスを出しておらず、損失計上期のため成立しない

配当利回り

該当なし

無配

引用:株価・発行済株式数・企業価値はStockAnalysis.com(データ提供:S&P Global Market Intelligence、2026年8月14日終値時点)/財務数値はCerebras Systems 2026年第2四半期決算発表/2025年通期売上高は同 目論見書(Form 424B4、2026年5月14日)
注1:EVは時価総額に有利子負債とオペレーティングリース債務を加え、現金及び現金同等物と投資有価証券を差し引いた一般的な定義による。制限付き現金6億8,468万ドルは控除していない。
同じ定義でStockAnalysis.comが公表するEVは455.9億ドルで、本表の値と整合する。
注2:直近12か月GAAP売上高6億8,067万ドルは、2025年通期5億999万ドルから2025年上期2億283万ドルを差し引き、2026年上期3億7,352万ドルを加えた値(筆者計算)。同社は2026年5月上場のため2025年第3・第4四半期の四半期別内訳は開示されていないが、12か月合計は算出できる。
注3:EV/コア売上高の分母は会社の非GAAP指標である。当四半期のGAAP売上高はコア売上高を下回るため、当四半期の実績を年率換算して分母に用いる場合、倍率はこれより高くなる。ただし2026年第1四半期はGAAP売上高がコア売上高を上回っており、両者の大小はワラント償却とパススルー売上の金額次第で入れ替わる。
注4:同社は2026年5月14日上場のため、52週の高値・安値は上場来の値幅にあたる。
注5:当サイトは投資助言を行わないため、割安・割高の判断や目標株価は提示しない。

株価の動きは業績と逆を向いた。決算は8月12日の引け後に発表されたが、その日の株価は前日比11.63%高で引けていた。7月29日終値169.39ドルからの上昇率は54.7%で、発表を迎える時点で期待値は高い位置にあった。翌13日は11.85%安、14日はさらに5.21%安。発表前終値からの累計は2営業日で16.44%の下落となる。

下落の主因は業績そのものよりも、報じられた「予想未達」の中身と決算前の織り込み度合いにあったと考えられる(筆者の解釈)。まず前者から見る。「売上高1億8,011万ドルは市場予想1億9,400万ドルに届かず」という比較を見かけるが、この予想値は会社が示したコア売上高のガイダンスである。Zacks集計のコンセンサスは約1億9,416万ドルで出典も金額も別だが、いずれもコアベースであり、GAAP売上高の実績と並べても同一基準にはならない。GAAP売上高にワラント償却などの差を戻せばコア売上高になり、いずれの予想に対しても8%前後の上振れへ反転する。どちらの売上高を使うかが「未達」と「上振れ」を分ける。GAAP売上高のコンセンサス自体が確認できず、GAAPで下回ったとも言い切れない。

後者について、TipRanksは決算前に株価が急伸していたため投資家がより強い内容を求めていたと伝えている(報道ベース)。ハードウェア売上の連続的な減少と、通期の引き上げに対して下期の上積みが小さかった点も材料視された。ただしハードウェアの前年同期比の減収はGAAPベースの話で、コアベースでは増収である。同誌はこの減少を2026年計画の想定内とも伝えている。下期は合計の上積み913万ドルまでしか確認できず、従来の第4四半期単独の想定は算出できない。

乖離の大きさそのものが警戒された可能性もある(筆者の解釈)。前四半期はコア売上高がGAAP売上高を下回っていたが当四半期は逆転し、差は1四半期で3,182万ドル動いた。売上高で16.5%、粗利率で14.2%対40.6%という幅は、コア売上高の51.5倍で評価される銘柄に小さくない。ただし同誌によれば、Wedbushのアナリスト、マット・ブライソン氏は短期の業績変動に注目しすぎると本質を見失うとの見方を示し、目標株価を280ドルから290ドルへ引き上げてBuyを維持している。会計の質への疑いが市場全体に広がったとは言えない。

筆者としては、この決算の要点は「クラウドへの転換が完了したこと」よりも「転換のコストがまだ表に出続けること」にあると考える。顧客ワラントの償却は2031年10月まで売上の控除要因として残る。会社の成長の絵はRPOと容量計画に支えられるが、投資家が日々目にする指標はGAAPで表示される。両者の距離がいつ縮まるかが、この銘柄の評価を決める変数になる。

次回決算までの確認ポイント

  1. 第3四半期のコア粗利率が会社の言う「底」の38〜40%に収まるか。借り戻しシステムの置き換えが計画どおり進むかどうかがここに表れる。
  2. 第4四半期に必要な前四半期比+25.0%の成長が視野に入るか。第3四半期決算時点での通期ガイダンスが据え置き・引き上げ・引き下げのいずれになるか。
  3. 顧客集中度が下がるか。四半期報告書の重要顧客注記で、上位3社の合計比率が76%からどう動くか。
  4. RPO254億ドルの増減と、最初の2年で認識される見込み比率が22%からどう変わるか。
  5. 8月18日開催のSUPERNOVAイベントで発表される製品と、それに紐づく新規契約の有無。

出典

免責

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。金額は米ドル建て、会計基準はUS GAAPです。Cerebras Systemsの会計年度は12月決算で、対象四半期は2026年6月30日締めの第2四半期にあたります。同社はコア売上高・コア粗利率・コア営業利益率・コア純損失・調整後EBITDAといった非GAAP指標を開示しており、本記事ではGAAPと非GAAPを区別して記載していますが、非GAAP指標の算定方法は企業によって異なるため他社との単純比較はできません。記事中の数値は発表時点のものであり、修正・再表示等により変動する可能性があります。株価は2026年8月14日の終値までを反映しており、その後の取引は含みません。投資判断はご自身の責任でお願いします。