過去最高の売上高。前年同期比で2倍超。牽引役はAIクラウド・産業・企業向けのACIEで前四半期比25.2%増。次期ガイダンスは1,080億ドルで市場予想超え。ただし粗利率は74.0%へ低下する計画。株価は通常取引で下落したのち時間外で反転。会社は2028年度に約70%の増収を見込むと説明した。
※金額は米ドル建て、特記なき限り会社のUS GAAPベース。市場予想は報道ベースで、指標ごとに集計元が異なり、同じ指標でも集計元により差がある(各表の引用元を参照)。率の変化幅は本記事を通じてpt(ポイント)で統一する。本文では、会社IR・SEC提出資料の確定値、決算説明会での会社説明(会社説明)、報道ベースの数値(報道ベース)、筆者自身の計算・解釈(筆者計算・筆者分析・筆者の解釈)を区別して記載する。
1. 決算サマリー:売上・利益ともに会社計画と市場予想を上回り、非GAAP EPSは前年同期比120.1%増となった
エヌビディア(NVDA)は2026年8月26日の米国市場引け後に、2027年度第2四半期(2026年7月26日締め)の決算を発表した。売上高は会社が前四半期に示した中心値910億ドルを5.7%上回り、粗利率はGAAP・非GAAPとも会社計画どおりに着地した。営業費用はGAAP・非GAAPとも会社計画をやや下回っており、増収分がほぼそのまま利益に乗る構図になっている。
表1:2027年度第2四半期 決算サマリー(金額単位:億米ドル、1株当たり利益は米ドル)
指標 | 実績 | 前年同期 | 前年比 | 市場予想 | 対市場予想 |
|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 962.21 | 467.43 | +106% | 922.70 | +4.3% |
GAAP 希薄化後EPS | 2.46 | 1.08 | +128.2% | --- | --- |
非GAAP 希薄化後EPS | 2.22 | 1.01 | +120.1% | 2.09 | +6.2% |
参考:GAAP EPS(株式評価益を税引前で控除・会社開示指標ではない) | 2.14 | 0.99 | +116.9% | --- | --- |
Data Center売上高 | 890.23 | 410.96 | +116.6% | 854.00 | +4.2% |
GAAP粗利率 | 75.0% | 72.4% | +2.6pt | --- | --- |
引用:NVIDIA「CFO Commentary on Second Quarter Fiscal 2027 Results」、CoinDesk(2026年8月26日)
注1:市場予想は指標ごとに集計元が異なる。売上高922.70億ドル・非GAAP EPS 2.09ドル・Data Center売上高854.00億ドルはCoinDesk報道(2026年8月26日、米国東部時間20時24分公開)による。売上高についてはAxiosがS&P Capital IQ集計の921億ドルを伝えており、集計元により約1.7億ドルの差がある。GAAP EPSと粗利率の市場予想は同一時点の集計値を確認できなかったため「---」とした。
注2:EPSの前年比は、丸められた開示EPSではなく純利益を希薄化後株式数で割った未丸め値から算出した(筆者計算)。開示EPSの丸め値どうしで計算するとGAAPは+127.8%、非GAAPは+119.8%となり、それぞれ0.4pt・0.3pt低く出る。
注3:「株式評価益控除後」は、GAAP純利益に含まれる株式評価益(当四半期77.71億ドル、前年同期22.47億ドル)を税引前のまま希薄化後株式数で割って差し引いた参考値である(筆者計算)。非GAAP調整の税効果は全項目合算の1行(当四半期15.17億ドル)でしか開示されないため、この行は税引前ベースの参考値にとどまる。各四半期のGAAP実効税率(当四半期16.5%、前年同期15.3%)で税引後に概算し直すと2.19ドルと1.00ドルとなり、前年比は+119.2%となる。実力ベースの前年比較は非GAAP行が担う。
2. 増収額の96.9%をData Centerが占め、伸びを主導したのはACIEだった
売上高962.21億ドルは前年同期比+105.9%、前四半期比+17.9%である。増収額は前年同期比で494.78億ドル、前四半期比で146.06億ドル。このうちData Centerの寄与はそれぞれ479.27億ドル(96.9%)と137.77億ドル(94.3%)だった(筆者計算)。事実上、この四半期の増収はData Centerだけで説明できる(筆者分析)。
会社は前四半期から市場プラットフォームの区分を「Data Center」と「Edge Computing」の2つに変更し、Data Centerの内訳をパブリッククラウドと大手消費者向けインターネット企業からなるHyperscaleと、AIクラウド・産業・企業向けを束ねたACIE(AI Clouds, Industrial, & Enterprise)に分けている。この新区分で見ると、当四半期の伸びを主導したのはHyperscaleではなくACIEだった。
表2:市場プラットフォーム別・報告セグメント別売上高(単位:億米ドル)
区分 | Q2 FY27 | Q1 FY27 | Q2 FY26 | 前四半期比 | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
Data Center | 890.23 | 752.46 | 410.96 | +18.3% | +116.6% | 92.5% |
Hyperscale | 487.10 | 430.50 | 241.68 | +13.1% | +101.5% | 50.6% |
ACIE | 403.13 | 321.96 | 169.28 | +25.2% | +138.1% | 41.9% |
Edge Computing | 71.98 | 63.69 | 56.47 | +13.0% | +27.5% | 7.5% |
合計 | 962.21 | 816.15 | 467.43 | +17.9% | +105.9% | 100.0% |
参考:Compute & Networking | 882.99 | 745.50 | 413.31 | +18.4% | +113.6% | 91.8% |
参考:Graphics | 79.22 | 70.65 | 54.12 | +12.1% | +46.4% | 8.2% |
引用:NVIDIA「CFO Commentary on Second Quarter Fiscal 2027 Results」
注1:市場プラットフォームは会社の管理区分、Compute & Networking/Graphicsは会計上の報告セグメントであり、両者は別の切り口である。それぞれの合計はいずれも962.21億ドルで連結売上高と一致し、消去項目はない。
注2:当四半期に会社は1社の分類をACIEからHyperscaleへ変更し、過年度の数値を修正再表示している。表中のQ1 FY27・Q2 FY26は修正再表示後の値であり、各四半期の当初開示値とは一致しない。
注3:構成比・前年比・前四半期比は百万ドル単位の確定値から算出した(筆者計算)。構成比は四捨五入のため内訳の単純合計が合計と一致しない場合がある。

図1:四半期売上高の推移と第3四半期ガイダンス(引用:NVIDIA各四半期CFOコメンタリー)
ACIEの前年同期比+138.1%という伸びについて、会社はAIネイティブ企業、事業会社、政府系(ソブリン)顧客からの最終需要に加え、AIクラウドを利用するハイパースケーラーも寄与したと説明している。Hyperscaleの+101.5%を大きく上回るペースであり、Data Center内の構成比はHyperscale54.7%・ACIE45.3%と拮抗してきた(筆者計算)。ただしACIEにはハイパースケーラーによるAIクラウド利用分も含まれるため、この構成比の変化だけで顧客数の増加や集中度の低下が示されたわけではない。売掛金の集中度はむしろ上がっており、区分の変化を顧客分散の進展と読むかどうかは解釈の問題である(筆者の解釈)。

図2:増収額の内訳(引用:NVIDIA各四半期CFOコメンタリー、筆者計算)
Edge Computingは71.98億ドルで前年同期比+27.5%。Blackwellワークステーションの販売が伸びた一方、メモリやシステム価格の上昇でコンシューマー向けPCの販売が鈍ったと会社は説明している。全社に占める比率は7.5%まで下がった。
先行指標については、四半期報告書(Form 10-Q)に契約期間1年超の契約に係る残存履行義務(RPO、未履行の契約残高)の注記があり、2026年7月26日時点で約32億ドル、うち30億ドルが繰延収益、2.44億ドルが未請求分とされている。四半期売上高の約3.3%で、対象も1年超の契約に限られる。上期に計上された顧客からの前受金は156億ドルと前年同期の75億ドルから倍増し、繰延収益残高も64.12億ドルと前年同期の20.35億ドルから3.1倍になった。
3.業利益率は66.2%へ5.4pt改善。ただし粗利率は頭打ちで、営業CFは純利益の約4割にとどまる
GAAP・非GAAPの粗利率はともに75.0%。前年同期比ではGAAPが+2.6pt、非GAAPが+2.5pt、前四半期比はGAAPが+0.1ptで非GAAPは横ばいだった。会社は前年同期比の改善をBlackwell Ultraによるミックス改善と説明し、前四半期比がほぼ横ばいなのはBlackwellアーキテクチャが売上の大半を占める状態が続くためだとしている。
ただし前年同期比の改善幅は、比較対象の水準の低さにも助けられている。前年同期のGAAP粗利率72.4%は、その前の四半期に中国向けH20の余剰在庫・購入義務に関連して45億ドルを費用計上し60.5%まで沈んだ水準からの回復途上だった。直近5四半期で見ると非GAAP粗利率のピークは2026年度第4四半期の75.1%であり、当四半期はそこを0.1pt下回る(株式報酬費用を含む新基準による修正再表示後の値)。粗利率は高い水準のまま頭打ちになっている。。
利益率の押し上げをより強く担ったのは営業費用である。GAAP営業費用84.08億ドルの伸びは前年同期比+55.3%で、売上高の伸び+105.9%に遠く及ばない。売上高比は11.6%から8.7%へ2.8pt低下し、これがGAAP営業利益率を60.8%から66.2%へ5.4pt押し上げた最大の要因である(筆者計算)。
表3:利益率と1株当たり利益の推移(単位:%、EPSは米ドル)
指標 | Q2 FY27 | Q1 FY27 | Q2 FY26 | 前四半期比 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
GAAP粗利率 | 75.0% | 74.9% | 72.4% | +0.1pt | +2.6pt |
非GAAP粗利率 | 75.0% | 75.0% | 72.5% | ±0.0pt | +2.5pt |
GAAP営業利益率 | 66.2% | 65.6% | 60.8% | +0.6pt | +5.4pt |
非GAAP営業利益率 | 66.5% | 65.9% | 61.1% | +0.6pt | +5.4pt |
GAAP EPS | 2.46 | 2.39 | 1.08 | +3% | +128.2% |
非GAAP EPS | 2.22 | 1.87 | 1.01 | +19.0% | +120.1% |
希薄化後株式数(百万株) | 24,285 | 24,391 | 24,532 | ▲0.4% | ▲1.0% |
引用:NVIDIA「CFO Commentary on Second Quarter Fiscal 2027 Results」
注1:営業利益率は営業利益を売上高で割って算出した(筆者計算)。
注2:2027年度第1四半期から非GAAP指標に株式報酬費用が含まれるようになり、過年度の非GAAP数値は新基準で修正再表示されている。旧基準では2026年度第2四半期の非GAAP粗利率は72.7%、非GAAP EPSは1.05ドルであり、この旧基準値を使うと非GAAP EPSの前年比は+111.4%となる。
注3:非GAAP EPSの前年比・前四半期比は未丸め値ベース。丸め値ベースではそれぞれ+119.8%、+18.7%となる。GAAP EPSの前四半期比のみ、会社開示の丸め値ベースの表記に合わせた。
EPS:GAAPが非GAAPを0.24ドル上回るのは、株式評価益77.71億ドルを非GAAPが除いているため
当四半期はGAAP EPS 2.46ドルが非GAAP EPS 2.22ドルを上回るという、通常とは逆の関係になっている。差の内訳はこうだ。非GAAP調整の税引前合計が▲72.51億ドル、税効果が+15.17億ドル、差引▲57.34億ドル。これを希薄化後株式数24,285百万株で割ると1株あたり0.236ドルになる。未丸め値のGAAP EPS 2.4578ドルからこの0.236ドルを引けば2.2217ドル、開示された非GAAP EPS 2.22ドルと一致する(筆者計算)。
税引前調整の大半は株式評価益で、残りは営業利益段階の調整+2.22億ドルとその他+2.98億ドルである。株式評価益は本記事が比較対象とする3四半期のいずれでも計上されており、前四半期は159.36億ドル、前年同期は22.47億ドルだった。当期固有の費目ではない。
株式数の減少もEPSに効いている。非GAAP純利益の前年比は+117.9%、すなわち2.179倍。希薄化後株式数は1.0%減の0.990倍なので、2.179÷0.990=2.201倍、EPS成長率にして+120.1%となり、開示EPSから計算した値と整合する(筆者計算)。

図3:GAAPベースの粗利率・営業利益率の推移(引用:NVIDIA各四半期CFOコメンタリー)
キャッシュフローと資本配分:純利益596.88億ドルに対し営業CFは240.77億ドルにとどまった
営業キャッシュフローは240.77億ドルで前年同期比+56.7%だが、前四半期の503.44億ドルからは52.2%減少した。フリーキャッシュフローは、そこから有形固定資産・無形資産の取得26.77億ドルと同資産に係る元本返済0.59億ドルを引いた213.41億ドル。売上高比は前年同期の28.8%から22.2%へ下がった(筆者計算)。
GAAP純利益596.88億ドルとの差356.11億ドルは、非資金項目である株式評価益の控除と、売上債権・在庫を中心とする運転資本の増加でおおむね説明できる(筆者計算)。会社は前四半期比の減少要因として、運転資本の調整に加えて現金税の支払い増加を挙げている(会社説明)。
資本配分では、自社株買い197.32億ドルと配当60.47億ドルの計257.79億ドルを株主に還元した(会社は約260億ドルと表記)。一方で250億ドルの無担保シニア債を発行し、長期有利子負債は前年度末(2026年1月25日)の74.69億ドルから323.66億ドルへ膨らんだ。それでも現金・現金同等物・市場性負債証券(以下、手元資金)566億ドルは有利子負債合計333.66億ドルを上回り、差引232億ドルのネットキャッシュとなる(筆者計算)。

図4:純利益・営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローの比較(引用:NVIDIA各四半期CFOコメンタリー)
4. 第3四半期ガイダンスは売上中心値1,080億ドルで市場予想を3〜4%上回る一方、粗利率は74.0%へ1.0pt低下する計画である
当四半期の実績を評価軸ごとに整理すると、売上高は会社ガイダンス中心値910億ドルに対して+5.7%、レンジ上限928.2億ドルすら3.7%上回った。市場予想に対しては集計元により+4.3%〜+4.5%。GAAP営業費用84.08億ドルは会社計画85億ドルを1.1%、非GAAP営業費用82.32億ドルは同83億ドルを0.8%下回っており、費用面でも計画を超過していない。粗利率はGAAPが計画74.9%に対し75.0%、非GAAPは計画どおりだった。
会社は2027年度第3四半期の売上高を1,080億ドル±2%と見込んでおり、中心値どおりに着地すれば四半期売上高が1,000億ドルを超えるのは同社として初めてとなる。
表4:2027年度第3四半期ガイダンス(金額単位:億米ドル)
指標 | ガイダンス(中心値) | 市場予想 | 対市場予想 | 前年同期 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 1,058.4〜1,101.6(1,080.0) | 1,039.0〜1,048.0 | +3.1%〜+3.9% | 570.06 | +89.5% |
GAAP粗利率 | 73.5%〜74.5%(74.0%) | --- | --- | 73.4% | +0.6pt |
非GAAP粗利率 | 73.5%〜74.5%(74.0%) | --- | --- | --- | --- |
GAAP営業費用 | 約92.0 | --- | --- | 58.39 | +57.6% |
非GAAP営業費用 | 約90.0 | --- | --- | --- | --- |
参考:非GAAP EPS(筆者試算) | 2.46 | 2.38 | +3.5% | --- | --- |
引用:NVIDIA決算プレスリリース(2026年8月26日)、NVIDIA「CFO Commentary on Third Quarter Fiscal 2026 Results」、Kiplinger(2026年8月26日)
注1:市場予想の欄は単一集計元のコンセンサスではなく、複数報道が示した予想値を並べたものである。1,039億ドルはCoinDesk報道、1,048億ドルはJohnson Investment Counselのチーフエコノミスト、ブランドン・ズレイク氏がKiplingerに示した値。非GAAP EPSの2.38ドルも同氏による。粗利率と営業費用は同一時点の集計値を確認できなかったため「---」とした。
注2:会社はEPSのガイダンスを開示していない。試算値は、売上高1,080億ドル×非GAAP粗利率74.0%=799.20億ドルから非GAAP営業費用90.0億ドルを引いた709.20億ドルに、非GAAPその他収益を直近実績並みの3.00億ドルと置いて712.20億ドルとし、通期税率レンジ下限の16.0%を適用して598.25億ドル、これを当四半期の希薄化後株式数24,285百万株で割ったものである(筆者計算)。税率18.0%を適用すると2.40ドルになる。
注3:同じ手順を当四半期の実績値に当てはめると非GAAP純利益539.56億ドル・EPS 2.2218ドルとなり、実際の539.54億ドル・2.2217ドルとセント単位で一致する。この照合で確認できるのは計算式の整合性までであり、その他収益・税率・株式数を当四半期並みに固定した仮定そのものの妥当性を保証するものではない(筆者計算)。
注4:前年同期比は、非GAAPの定義変更の影響を受けないGAAPベースの数値と比較した。非GAAP粗利率・非GAAP営業費用の前年同期は新基準での修正再表示値が開示されていないため「---」とした。
注5:会社は通期ガイダンスを開示していないため、通期見通しに対する上方・下方修正という論点はそもそも存在しない。
成長率の方向は、前年同期比・前四半期比のどちらで見ても減速である。売上高の前年同期比は第1四半期+85%、第2四半期+106%と加速してきたが、第3四半期ガイダンス中心値では+89.5%に落ちる。前四半期比も第1四半期+20%、第2四半期+17.9%に対し第3四半期は中心値ベースで+12.2%となる(筆者計算)。もっとも、ガイダンスには中国向けData Centerコンピュート売上をゼロと置く前提が入っており、当四半期の中国向けHopper製品の出荷はData Center売上の1%未満だったと会社は説明している。
粗利率74.0%は当四半期実績から1.0pt低い。直近5四半期はおおむね75%近辺で推移してきたが、その水準を下回る計画が出た点は、ガイダンスのなかで最も見落としやすい部分である。決算電話会議で、エヌビディアの最高財務責任者、コレット・クレス氏は2028年度の売上高について「前年同期比で約70%成長するというのが現時点の暫定的な見通し」と述べ、これは供給制約を前提とした数字だと説明した(会社説明)。最高経営責任者のジェンスン・フアン氏も、需要は70%をはるかに上回るが供給の裏づけがあるのは70%程度である、という趣旨の説明をしている(会社説明)。
5. 前受金156億ドルは需要を示すが、売上債権630.59億ドルと保証1,085億ドルは負担として残る
以下は当四半期の開示から筆者が整理したポイントである。判断の材料を有利・不利に分けて並べたもので、優劣を採点したものではない。
ポジティブ要因
- 顧客の前払いが積み上がっている。上期の繰延収益増加額177.09億ドルのうち156億ドルが顧客前受金で、前年同期の75億ドルから倍増。実際に入金された資金だが、取消条件・返金条件は開示されておらず、需要を示す材料の一つと見るにとどめたい(筆者の解釈)。
- Data Center内の構成が変わってきた。ACIEが前年同期比+138.1%とHyperscaleの+101.5%を上回り、Data Center内の構成比は45.3%へ。特定クラウド事業者の設備投資サイクルへの感応度が下がる方向に働きうる(筆者の解釈)。
- 営業レバレッジが効き続けている。営業費用の伸びは売上高の伸びの半分程度にとどまり、売上高比は8.7%へ低下。GAAP営業利益率は5四半期連続で改善している(筆者計算)。
- 調達コミットメントを積み増している。供給・生産能力に関するコミットメントは前四半期の1,190億ドルから2,790億ドルへ拡大。会社は主にメモリの調達によるものだとしている。
- ネットキャッシュを維持している。250億ドルの社債発行後も、手元資金は有利子負債を上回る。
リスク要因
以下は筆者整理のリスクシナリオであり、発生を予測するものではない。
- 粗利率の低下が計画に織り込まれた。第3四半期ガイダンスの中心値は当四半期実績より1.0pt低く、レンジは上下0.5ptしかない。メモリ価格の上昇が続けば、この水準の維持自体が論点になる。
- 売上債権の膨張が現金回収の遅れとして表れている。DSOは15日延びて60日、残高は630.59億ドル。回収が滞れば損益とキャッシュフローの乖離はさらに開く。
- 売掛金の集中度が高い。四半期報告書によれば、2026年7月26日時点で直接顧客5社が売掛金残高の22%、14%、13%、11%、10%を占め、単純合計は70%に達する。前期末は3社で25%、18%、13%だった(筆者計算)。
- 在庫の積み増しが新アーキテクチャの立ち上がりに賭けている。在庫は315.75億ドル。Vera Rubinの立ち上げが計画どおり進まない場合、評価損の規模は前年度のH20関連45億ドルより大きくなりうる。金額は試算しておらず、発生を予測するものでもない(筆者の解釈)。
- 保証の最大エクスポージャーが1,085億ドルに達している。うち1,050億ドルはSB EnergyのPORTS-Pikeキャンパスに係るもので、対象となる20年リース(OpenAI向け)では限定的な例外を除きエヌビディアのインフラを専有的にホストする。これは条件が満たされた場合に負う偶発的な最大エクスポージャーであり、現時点の負債計上額ではない。
- 投資残高も急拡大している。非市場性株式は478.98億ドル(前年同期37.99億ドル)、変動持分事業体(VIE、議決権によらず支配関係が判定される事業体)に係る最大損失エクスポージャーは47億ドル。株式投資の評価変動や減損はOther income, netを通じて損益にも反映される。顧客の資金調達を自社が支える構図は、循環的資金調達との懸念を招きうる(筆者の解釈)。
- 中国向けData Centerコンピュート事業が実質的に限定されている。当四半期の中国向けHopper製品出荷はData Center売上の1%未満で、第3四半期ガイダンスも中国からのData Centerコンピュート売上をゼロと置く。規制が緩めば上振れ要因になるが、現状は成長の選択肢が1つ閉じたままである。
6. 決算は市場予想超え。株価を時間外で4.10%高へ転じさせたのは2028年度の成長見通しだった
当四半期の決算は、実績が会社計画と市場予想の双方を上回り、次期ガイダンスも市場予想を上回った。ただしエヌビディアは通期ガイダンスを開示しておらず、既存見通しを引き上げたわけではないため、一般的な意味でのbeat-and-raiseとは性質が異なる。
株価の動きは決算そのものより複雑だった。8月13日終値225.30ドルを起点に、14日から24日までの7営業日続落で208.48ドルまで7.5%下げている。8月25日は213.05ドルへ2.19%反発したものの、決算当日の8月26日は209.66ドル、前日比3.39ドル安の1.59%安で引けた。日中の値幅は209.23ドル〜213.60ドルである。
決算発表直後の時間外取引では、株価はいったん1.3%程度下げた(報道ベース)。市場が最初に反応したのは粗利率ガイダンスだったと見られる。流れが変わったのはクレス氏が電話会議で説明を始めてからで、2028年度の売上高成長率約70%という見通しが示されると株価は上昇に転じ、東部時間18時35分時点で218.25ドル、終値比8.59ドル高の4.10%高となった。LSEG集計の市場予想は約44%だったと報じられており(報道ベース)、この差が反転の理由として最も整合的だと筆者は考えている(筆者の解釈)。決算発表翌営業日となる8月27日の通常取引は本稿執筆時点で未了であり、当日の終値は反映していない。
報道の一部には、非GAAP EPSの前年比を+111.4%とするものがある。これは旧基準の非GAAP EPS 1.05ドルと新基準の2.22ドルを比較したもので、会社開示の+120%とは基準が異なる。株式報酬費用の扱いが2027年度第1四半期から変わっている点は、前年比を見るときに必ず確認したい。
表5:株価とバリュエーション(株価は米ドル)
項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
決算前日終値(2026年8月25日) | 213.05 | 前日比+2.19% |
決算当日終値(2026年8月26日) | 209.66 | 前日比▲3.39ドル、▲1.59% |
時間外株価(同日18時35分・米国東部時間) | 218.25 | 終値比+8.59ドル、+4.10%。StockAnalysis.com掲載の時点価格 |
翌営業日終値(2026年8月27日) | --- | 本稿執筆時点で取引未了 |
実績PER(TTM・GAAP) | 26.5倍 | 時間外株価では27.6倍 |
参考:実績PER(TTM・非GAAP) | 30.0倍 | 時間外株価では31.3倍。基準混在のため参考値 |
配当利回り | 0.48% | 四半期0.25ドル、年換算1.00ドル |
予想PER・PEG | --- | 信頼できる同一時点の集計値を取得できなかったため記載しない |
引用:StockAnalysis.com(データ提供:S&P Global Market Intelligence)、NVIDIA各四半期CFOコメンタリー
注1:TTM(直近12か月)は2026年度第3四半期・第4四半期と2027年度第1四半期・第2四半期の4四半期であり、2026年度第2四半期は含まない。TTMのGAAP EPS合計は7.91ドル、非GAAP EPS合計は6.98ドル(筆者計算)。PERは決算当日終値209.66ドルで算出した。
注2:TTMのGAAP EPSには、2027年度上期に計上された株式評価益237.07億ドル(税引前)が含まれる。この評価益は市況次第で逆方向にも振れるため、TTMベースのPERは事業の収益力をそのまま表していない。
注3:TTMの非GAAP EPSは、2026年度第3四半期の1.30ドルのみ旧基準(株式報酬費用を除外)で、残り3四半期は新基準である。基準が混在している点に留意が必要となる。
注4:当サイトは投資助言を行わないため、割安・割高の判断や目標株価は提示しない。アナリストの目標株価コンセンサスも掲載しない。
筆者の解釈を書いておくと、この決算で最も重い情報は当四半期の実績でも次期ガイダンスでもなく、供給制約下で約70%成長という2028年度の枠組みが会社の口から出たことだと考えている。粗利率の1.0pt低下も売上債権の15日の延伸も、成長が続く前提のもとでは「成長のコスト」として説明がつく。逆に言えば、その前提が揺らいだときに最初に効いてくるのがこの2つの数字である。
次回決算までの確認ポイント
- 第3四半期の粗利率が計画のレンジに収まるか。メモリ価格の上昇分をどこまで販売価格や調達契約で吸収できているか。
- DSOが当四半期の水準から戻るか、さらに延びるか。売上債権残高と営業キャッシュフローの乖離幅。
- Vera Rubinの立ち上がりに伴う在庫の動きと、評価損計上の有無。
- ACIEの成長率がHyperscaleを上回る状態が続くか。Data Center内の構成比の推移。
- SB Energy関連を含む保証エクスポージャーと出資残高が、四半期報告書でどこまで拡大するか。
出典
- NVIDIA「NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2027」(2026年8月26日)
- NVIDIA Form 8-K Exhibit 99.1(SEC、2026年8月26日)
- NVIDIA「CFO Commentary on Second Quarter Fiscal 2027 Results」(PDF)
- NVIDIA Form 10-Q(2026年7月26日期末、SEC)
- NVIDIA「CFO Commentary on First Quarter Fiscal 2027 Results」(PDF)
- NVIDIA「CFO Commentary on Fourth Quarter and Fiscal 2026 Results」(PDF)
- NVIDIA「CFO Commentary on Third Quarter Fiscal 2026 Results」(PDF)
- NVIDIA「CFO Commentary on Second Quarter Fiscal 2026 Results」(PDF)
- Kiplinger「Nvidia Earnings: Live Updates and Commentary August 2026」
- CoinDesk「Nvidia tops earnings estimates, guides to $108 billion in revenue next quarter」(2026年8月26日)
- Axios「Nvidia projects 70% revenue growth in 2028」(2026年8月26日)
- AlphaStreet「NVIDIA Corporation (NVDA) Q2 2027 Earnings Call Transcript」(2026年8月26日)
- CNBC「Nvidia earnings takeaways: Huang forecasts 70% fiscal 2028 revenue growth, far above estimates」(2026年8月26日)
- CNBC「Nvidia's 70% sales growth projection for 2028 wows analysts on earnings call」(2026年8月26日)
- StockAnalysis.com「NVIDIA (NVDA) Stock Price History」(データ提供:S&P Global Market Intelligence)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。金額は米ドル建てで、会社の会計基準はUS GAAP、会計年度は1月末締めであり、本記事が対象とする2027年度第2四半期の締め日は2026年7月26日です。同社は非GAAP指標を開示していますが、2027年度第1四半期より株式報酬費用を非GAAP指標に含める方針へ変更しており、それ以前の非GAAP数値と単純比較はできません。株価、市場予想、決算数値の解釈は時間の経過とともに変動し、決算発表翌営業日である2026年8月27日の通常取引は本稿執筆時点で終了していないため、株価反応の記述は途中経過にとどまります。投資判断はご自身の責任で行ってください。